AppleInsider: iPhone 4 と iOS vs. Android: ハードウェア機能

原文: iPhone 4 and iOS vs. Android: hardware features

By Daniel Eran Dilger
Published: Monday, June 21, 2010 06:00 PM EST
今週後半の Appleスマートフォンの第四世代のリリースが近づいているが、Motorola Droid や HTC/Google Nexus One、HTC Droid incredible、 HTC EVO 4G などの、 GoogleAndroid OS を利用した代替機種に興味をもっている購入者もいるのではないだろうか。 ここでh、シリーズ第一弾としてハードウェアの観点から両者を比較してみよう。

これはすべて以前たどった道
一年前 iPhone 3GS が発表された際、対抗馬として新しい Palm Pre が存在した。これによってそれ以前の半年間にわたって市場の熱気が高められていた。 それでもなお、Apple の新しい携帯電話が発表されると、Pre をめぐる熱狂は崩れ去る一方で、Palm 初の新しい webOS スマートフォンにあるような派手な新機能はほとんどなかったにもかかわらず、iPhone 3GS は売上げ記録を更新した。
AppleiPhone 3GS には、専門家らが Palm Pre を差別化する重要なものとして予測していた、ウェブベースのマルチタスキングもなく、誘導性のワイヤレスチャージャーもなく、スライド式の物理キーボードもなく、交換可能なバッテリーもなく、さらには LED カメラフラッシュもなかった。 その一方で Apple の次世代電話は、エンドユーザにとって重要だと思われる機能で Pre に双肩ないし上回っていた: プロセッサスピード、カメラ品質、バッテリー持続時間、グローバル検索、そして Bluetooth ステレオサポートだ。
昨年の iPhone 3GS のリリース以降、webOS ベースの Palm Pre は鳴りを潜め、iPhone との競争は Motorola や HTC が発表した GoogleAndroid OS を実行する一連の新しいスマートフォン -- HTC Hero/Droid Eris、Motorola Verizon Droid、HTC/Google T-Mobile Nexus One、HTC Droid Incredible そして HTC Sprint EVO 4G へと引き継がれていった。

十分、それとも良すぎる?
GoogleAndroid OS 2.2 "Froyo" をリリースしたことも iPhone に対する競争に油を注ぐことになったが、Apple は暦年 2010 年第一四半期には iPhone の売上げで記録を更新し、そのほとんどの注意を第二四半期の新しい iPad へと注いでいた。 AppleiPhone 4 の発表へと準備を進めている今、問われているのは: Apple の新しいスマートフォンAndroid ニュースに溢れている市場で際立つことができるほど優れたものになるだろうか、あるいは Androidバイスによる追い上げは iPhone 4 が市場に登場した際に打ち砕かれることになるのか? 
15 年間にわたって Microsoft Windows という単一文化によって支配されてきた PC とは異なり、ほとんどの消費者市場は直接的でオープンな競争にさらされている: 自動車、オートバイ、冷蔵庫、テレビ、その他の消費者製品では数多くの競合する製造企業が存在するため、スマートフォンにおいても複数の製造者がいたとしてもまったく問題ではないはずだ。 誰もが製品を市場に送り出し、購入者を見つけられるべきなのだ。もし彼らの製品が十分に優れているのであれば。
その一方で Apple は過去 10 年間にわたって競争相手(より大きく、より経験を積んだ、そしてすでに確固たる地位を築いた企業を含めて)が太刀打ちできないような製品を投入し続けてきた。 iPod の導入から 10 年近くが経過しても、Apple は引き続き Sony からも Microsoft からもほとんど意味のある競争を仕掛けられないまま成長し、実質的にハードドライブベースの MP3 プレーヤーの市場を創りだし、それをフラッシュメモリーベースの MP3 プレーヤー市場へと引き継ぎ、その後に iPod touch をリリースした。その間、誰からもほんとうの意味での競争は仕掛けられなかったのだ。 iPhoneiPad も似たような軌跡を辿り、Apple の不況を打ち負かすような売上げ記録をへこませることさえしないような、脅威ともいえないような一連「キラー」製品を相手にしてきた。

Apple 製品と Android 製品との比較
AppleスマートフォンAndroid を実行する代替機との比較をする上での難点は、そのふたつが異なるものだということだ。 例えば、iPhone のハードウェア機能を Android モデルと比較することはできるが、iPhone 4 の価値はハードウェアだけにあるのではなく、そのハードウェアとそれを使いやすくしている iOS ソフトウェアとの統合、メディアとアプリ管理、ソフトウェアアップデート、プッシュメッセージング、リモート管理、その他の機能のための AppleiTunesMobileMe クラウドサービスとの統合にあるからだ。
逆に言うと、iPhone 4 を使うということが、例えば合衆国ではユーザが済んでいる地域を満足にカバーし切れていないようなキャリアーに縛られているというように見なしたとしたら、iPhone 4 の価値はすべて排除することもできる。 そのようなシナリオでは、目標が実際に通話を行うことになる訳で、機能面ではるかに劣る携帯電話と比較しても、そちらの方が優れたものであることになってしまう。
それは、ある特定のユーザにとってもっとも意味をなす個々の環境や好みの色といったようなものだ。 しかし、世界史上において製品全般の魅力を見ることも大切なことである。というのも、もし Apple がリードを維持し続ければ、AT&T の穴だらけのカバー率といった問題も、ネットワークの拡張や合衆国での他のキャリアーで iPhone が利用できるようになれば解決されることになるからだ。 その逆に、もし十分な数のユーザが Android へと流れれば、Apple もベストなサードパーティ開発者らの主要な注意を惹きつけられてきたそのリードをやがては失うことになるだろう。
将来に向けての勢いがどの方向に向いているのかを理解するにあたって、このシリースでは、iOSAndroid との比較を、ハードウェア機能、デスクトップとクラウドとの統合、モバイルキャリアー、OS 機能、サードパーティ製アプリ、市場シェアの観点から見ていくとともに、こうした違いから明らかになるもの、現在の製品がどの程度競争力のあるものなのかだけでなく、これらが今後の iOSAndroid の現実的可能性にどう影響するのかを見ていくことにする。

Android はハードウェア機能でリードしているか?
Android に当てはまる主要なアドバンテージのひとつは、さまざまなハードウェアメーカーの間でより競争力のある選択肢が可能となるはずだ、というものだ。これは言い換えると、ハードウェアの革新においてより早い進歩という結果につながるはずだ。 これはこの半年間を振り返ってみると特に当てはまる。新しい Androidバイスが次々と発表されていたにもかかわらず、AppleiPhone 3GS は対照的に時代遅れの感を増していたからだ。
他の市場でもあるように、Android ベースのリリースはハードウェアサイクルとソフトウェアリリースの両面でスローダウンする可能性が高い。それはちょうど車が一年ごとのサイクルで市場に送り出されるのと同じだ。 Apple は新しい iPodiPhone を毎年リリースしていると人々が不満を口にしていたのはそれほど前のことではない。 当然のことながら、新しい Android 携帯電話が三ヶ月のサイクルで送り出すというのは簡単に維持できることではない。
しかし全体的な話としては、「プラットフォームのオープン性」が自動的により優れたハードウェア機能につながるというアイデアは、Android が一時的なアドバンテージを得たというだけのことでもある。それは今や iPhone 4 の投入によってなってしまった。というのも iPhone 4 の方が、インターフェースの洗練や利便性だけでなく、Android エコシステムが力を発揮すると考えられているまさにその分野であるハードウェア仕様においてもトップの Android 携帯電話を大幅に上回るペースを維持しているからだ(下図参照)。
例えば iPhone 4 のカメラは、多くの Android 携帯電話にはないフロント側のキャプチャーと HD 録画能力の両方を提供するばかりでなく、今日のハイエンド Androidバイスの 20 fps ビデオではなく実用に堪える 30 fps ビデオでキャプチャーできる。 Apple はまたより高速な 802.11n Wi-Fi ネットワーキングをサポートし、高度な 6 軸モーションセンサーを iPhone 4 の新しい ジャイロスコープ[和訳] でデビューさせている。 この新しい携帯電話はまた、マイクのための複数のノイズキャンセレーションも提供している。この機能は、もっともお洒落な Android 携帯電話でもほとんど装備されていない。
さらに iPhone 4 のビデオ iPod からのレガシーのおかげで、iPad の 1024x768 というビデオプロジェクタやモニターに対応した VGA スタイルの出力だけでなく、コンポジット(RCA)以上の解像度をもつアナログビデオにも対応している。 HTC Incredible は基本的なコンポジットビデオ出力(2005 年の 5G iPod から装備されているテクノロジー)をサポートするのみで、一方の HTC Evo は HDMI のサポートを盛り込んでいるにもかかわらず 限られた画質のビデオ出力 しか実現しておらず、アナログビデオはまったく出力できない。 その他の最新 Android 携帯電話は、ビデオ出力機能をいっさい備えていない。 生のハードウェア機能におけるリードと言う噂もかなりのものだ。

iPhone 4 vs htc droid incredible evo nexus one

プラットフォームにおける単一文化は必ずしもハードウェア面での革新を促進しない
オープンなプラットフォームではハードウェア面での革新を促進するはずだというアイデアは、PC 分野から生まれでてきたものではない。 特定の PC モデルは、より優れたグラフィクスオプションを提供し、時には例えば AppleMac よりも高速なプロセッサを投入することもあったが、Mac は長きわたってより品質の高いコンポーネント、より優れたインダストリアルデザインを実現し、まっ先に新しい機能(USB、FireWire、Gigabit Ethernetオプティカルデジタルオーディオ、緊急モーションセンサー、バックライトキーボード、DisplayPort、など)を導入・普及させることも多かった。
最近では、PC メーカー間での熾烈な競争によって、主により低価格を実現する(ハードウェア面で切り詰めたり、古いテクノロジーを採用して)という方向へ努力が向けられ、その結果としてネットブックでの短期的なブームが起こった。 AppleMac でのバーを高いまま維持することで、結果的に高価格で高品質を維持することになった。 これによって、価格そのものが市場から外れてしまうのではなく、AppleMac の売上げは PC 市場全体のおよそ四倍ほどの勢いで伸びることになった。 しかしスマートフォンの分野では、Apple は品質と価格とのバランスを同等かやや低めに設定している。これは同社が何千万台という iPod を売り上げたことによって生まれた経済規模のおかげだ。
iPhone は、他のどの携帯電話が提供してきたよりもはるかに大きなストレージメモリーを備えて 登場し、巨大なシステム RAM とオンボードストレージメモリーとを詰め込んだ iPhone 4 でのその分野でのリードを保っている。 Apple はまた、iPhone 4A4 アプリケーションプロセッサ(CPU、GPU、サポートされるチップセットロジック、そして RAM をまとめた「システム・オン・チップ」)のために、自社独自のカスタムシリコンを開発するだけのリソースを手にしている。 同社はまた、Android 携帯電話が今年市場にもたらした高解像度ディスプレイを大幅に越える、iPhone 4 の新しい Retina ディスプレイ 高解像度 IPS スクリーンといった最高のテクノロジーを見いだして独占的にアクセスできるだけのリソースも持っている。

ハードウェアのロック解除
Apple はまた、新しい FaceTime[和訳] のように新たなカメラハードウェアを高度ながら簡単に利用できるビデオ通話をサポートするソフトウェアとを結びつけるといった、高度なハードウェアとソフトウェアを統合するテクノロジーポートフォリオを構築するためのリソース(そして関心と動機)も持っている。
Android 界隈では、ハードウェアメーカーがフロントカメラや高解像度カメラを含めることがあるかもしれないが、そのカメラを駆動するソフトウェアとの統合は不十分なままだ。これは、Motorola Droid(良い写真が撮れないひどいソフトウェアとペアになっている非常に高いメガピクセルカメラ)や新しい HTC EVO 4G(サードパーティが提供する現実には何もできないような問題を孕んだプロプライエタリソフトウェアに依存せざるを得ないフロントビデオチャットカメラ)の両方のケースで見てとれる。
AppleiPhone 4 は、錯塩の 3GS と同じく、ビデオを撮影するだけでなく、ビデオのトリムや配布も簡単にできるようになっている。 非常に高度な(しかし 5 ドル)iMovie app for iPhone 4 を作るという Apple の関心から、革新的なソフトウェアを利用するハードウェアを追い求めるという同社の関心の程度が伺える。 これは、Windows PC と Android モバイルデバイスの双方に著しく不足しているもので、使いやすさとか実際的な機能とは関係なくハードウェアの仕様がひとり歩きしてしまっている。
同様に、Android 携帯電話メーカーは、AppleiPhone 4 の数ヶ月前から高解像度スクリーンと新しいスクリーンテクノロジー(OLED ディスプレイなど)を導入しはじめていたが、既存のサードパーティ製タイトルが見栄え良く、サポートしているさまざまに異なる解像度をもつすべてのスクリーンに適切に表示されるようなソフトウェア面でのサポートを送り出せないでいた。 AppleiPhone の解像度を均一に四倍師、既存のアプリ内にあるテキストやユーザーインターフェース要素を最適な解像度で自動的に描画する開発者サポートを提供した。
Apple はまた iOS 4 でグラフィクスハードウェアアクセラレーションのための最新 OpenGL ES スタンダードをサポートするにあたってもリードを広げ、ゲーム開発者らが見栄えが良くパフォーマンスに優れた高度なタイトルを生み出せるようにしている。 その一方では、サードパーティソフトウェアで、ソフトウェアの盗難を積極的に押し進めている、大規模な App Store を利用するように動機付けすることもしている。
たとえ Google が同じようなソフトウェアサポートを提供して、パートナー企業が携帯電話に搭載している高速な GPU ハードウェアを最大限に活用するようにしたとしても、開発者らの注意をひくことはできない。なぜなら、同社のストアは週末プログラマ向けであって、商業開発者向けではないからだ。 これは、コンテンツのためにお金を払いたがらないユーザがソフトウェアを「オープン」に盗んでいくことに対して、Google が開発者らを保護する手だてをほとんど講じていないことにもよる。
iPhone 4 は、開発者らが実際にそれを活用できるような CoreMotion API とともに初めてスマートフォンジャイロスコープを導入するなど、他の領域においてもソフトウェア経由でハードウェアの最新技術を活用し続けている。
CoreLocation や Accelerate といった他の Apple のソフトウェア API 同様、iOS 4 にあるこの新しいモーションコントロールフレームワークは新旧の iOSバイス間にあるハードウェアの差異を切り離し、新しいモデルが特定のハードウェア機能を導入する(あるいは導入を失敗する)たびに Android が経験する細分化問題を回避している。 その結果、AppleiOS ではサードパーティが実際に新しいハードウェアを利用しやすくなっているのだ。
この記事の次のセグメントでは、デスクトップおよびクラウドサービスとの統合において、Android 製品は iOS 4 にどう対抗しているのかを見ていくことにする。