AppleInsider: JP Morgan: フランスの DRM 法に他国が追従する可能性は薄

JP Morgan: Other countries unlikely to follow France’s lead on DRM
By Prince McLean
Published: Tuesday, March 28, 2006 11:00 AM EST

昨年春に携帯音楽市場での DRM の役割について 51 ページに及ぶ調査報告書をクライアント向けに作製した JP Morgan のアナリストが、差し迫るフランスの法的環境が Apple Computer に適用された際の影響について詳細な追跡記事を発表し、他国が同様の商的処置を講じて追従する可能性はないだろう、と語っている。

Apple は公に、フランスで最近上程された法案に対して 強く反対する姿勢 和訳 を明らかにしている。同法案は、Apple に対して iPod + iTunes エコシステムをフランス国内に開示するよう迫るものだ。Apple はこれに対し、フランスがデジタル音楽および映画の海賊天国になると反発している。

「合衆国商務長官 Carlos Guiterrez は最近、Apple の立場に理解を示し、フランスの主張は合衆国の立法機関とは異なるとの見方を示した」 とアナリストの Bill Shope は火曜日クライアントに向けて発表した調査報告書のなかで述べている。「現時点では、フランスの同法案に賛成を表明しているのはデンマークのみで、EU はこれまでのところ賛意を表明していないようだ。」

Shope は、Apple 独自の iPod および iTunes テクノロジーで顧客を囲い込んで、PC 業界で犯したのと同じ過ちは犯すことはないだろうとしている。彼はその大きな理由のひとつとして、MP3 への対応を挙げている。

「過去 4 年間において、顧客の囲い込みをめぐる議論は、ポスト IT バブルの影響もあって囲い込みを疫病のように嫌う消費者の意向もあり、タブーとされてきた。その結果、DRM によるロックインが進み、Apple のデジタル音楽事業の弱点の源、そして短期的な参入障壁を築くことを優先して長期的な市場支配への視野が欠落している典型的な例としてみなされるようになってきている」 と Shope は述べている。「しかしこうした見方は、PC 業界史の誤った解釈に基づくものだ。実際、AppleiPod はかなり 『オープン』 で、MP3、AAC、そして WAV 圧縮フォーマットにも対応している。」

Apple は MP3 ファイルに対応しているため、CD を焼いたり、違法にダウンロードした音楽さえも iTunes の音楽ライブラリに追加できる、と Shope は指摘している。「こうしたコンテンツはいずれも FairPlay によって保護されていない。その結果、これまで論じてきた囲い込み問題には当てはまらない」と彼は述べている。「DRM による囲い込みやオンラインで音楽を購入することを不快に感じる iPod ユーザは、CD で購入したり、P2P サイトからダウンロードするだけだ。」

この 「実質的な」 開放性は、メインストリームのメディアや業界専門家に見過ごされがちなものの、Apple のカスタマーはこれには当てはまらない、とも Shope は指摘している。「Apple の独自ミュージックストアは iPod の大規模な需要を生み出したが、MP3 形式への対応などによる iPod の開放性もまた iPod の成功要因の重要な要素だといえる」 と彼は述べている。「Sony の Network Walkman NW-HD1 や VAIO Pocket VGF-AP1L が、両モデルとも iPod キラーと称しつつ、波に乗り損ねたのは、こうした見方を支持している。」

Sony の機器は当初、独自の ATRAC 形式のみにしか対応しておらず、MP3 はサポートしていなかった。そのため消費者の多くが食指を伸ばさなかった。Sony は 2004 年 9 月に漸く、将来の製品では MP3 ファイルもサポートするという戦略の大転換を発表したものの、その決断は遅すぎた、と Shope は指摘している。

合衆国では、DRM システムの背後にある法的保護は、デジタルミレニアム著作権法 (Digital Millennium Copyright Act:DMCA) に拠るところが大きく、西ヨーロッパでも状況は似ている、と Shope は述べている。しかし、アジアやラテンアメリカの一部地域では厳格な法運営が整っておらず、これが Apple のデジタル音楽モデルの短期的な足かせになっている面がある、とも彼は指摘している。「しかし、こうした懸念は長くは続かないだろう。」

Shope はさらに、DRM の迂回を合法化するというフランスの決断は孤立した動きであるとして、それを裏付ける根拠を示している。彼によると、DRM は 「顧客の囲い込み」 の強力な手段となりうるものの、音楽レーベルは DRM 保護のないマーケティングには乗り出さないだろうとのこと。「フランスでこの法案が可決された場合、オンラインミュージックプロバイダらはフランスから撤退するか、同地域での品揃えを極端に制限せざるを得なくなるだろう」 と述べている。

Shope はまた、同法案は合法的な購入オプションを制限してしまうため、消費者にもコンテンツ所有者にも不利益をもたらし、結果的に海賊行為が活発になるだろう、とも考えているようだ。

Shope は続けて、Apple にとってフランス市場がどれほど重要かについても自説を展開している。「Apple ができるだけ多くの市場で iPod および iTunes のコンテンツを販売できるほうが良いと考えている。ただ、上述のように、フランスの法的環境によっては、AppleiTunes の売込みを制限さざるを得なくなるかもしれない」 と Shope はクライアントに対して語っている。「Apple はヨーロッパの個々の国における市場シェアを公開していないが、フランスは Apple の音楽事業の売り上げ全体の 1 - 2% にも満たないのではないかとみている。たとえ Apple がフランスでのオンラインミュージックストアを閉鎖したとしても、同社は引き続き iPodMac といった製品を販売できる」 その結果、フランス市場からの撤退 和訳 は同社の業績に大きな影響はない、と彼は述べている。

JP Morgan は全般的に、最近のフランス政府の政策は Apple には大きな影響を及ぼすことはないとし、他の国が企業や消費者からの反対運動を受けてまで同様の手段をとるとは考えにくいとしている。

「2006 暦年における一株あたりの収益 (EPS) をめぐる予測では、短期的には大きく価格が上下する可能性が高いものの、Apple 株には大きく値を上げる可能性があるとみている*1」 と同社は語っている。「Apple の現時点での売り上げと高収益性は、製品ラインアップの充実、PC 市場シェアにおける長期的な伸張の可能性から、Apple 株の評価は引き続き拡大すると考えている。」

JP Morgan は Apple 株を 「Overweight」 としている自社の評価を再度強調している。

*1:At 24x our calendar 2006 earnings-pershare (EPS) ex-options estimate, we continue to believe Apple’s stock has significant upside potential, despite the likelihood for continued volatility over the near-term