AppleInsider: なぜ Apple は HTML 5 に賭けているのか: ウェブの歴史 [Page 3]

原文: Why Apple is betting on HTML 5: a web history [Page 3]

By Daniel Eran Dilger
Published: Saturday, September 19, 2009 07:00 PM EST
WHATWG が立ち上げた HTML 5
W3C 内部でおこなわれていたウェブ標準をめぐる遅々としたほとんど取るに足らない進捗に業を煮やした AppleMozilla、そして Opera は、2004 年に独立した WHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)を共同で設立し、HTML、CSS、DOM、そして JavaScript を進化させてリッチなウェブアプリのための現実的なプラットフォームにすることを目標とした。
WHATWG は特に、Adobe FlashMicrosoft Silverlight、そして Sun JavaFX を迂回し、ウェブを当初のオープンな姿に戻せるようにデザインされていた。 この目標を達成するためには、1999 年以降ほどんどなにも変わっていない HTML の仕様のモダン化が必要だった。 DOM や API を備えた高度な JavaScript を採用して、ドラッグ・アンド・ドロップや高度なドローイング、オフライン編集といった、デスクトップアプリケーションに匹敵するようなリッチなウェブアプリ機能を提供するために、追加作業も必要だった。
2007 年 WHATWGW3C にたいして、同グループによる HTML 5 という仕様を XHML 2.0 の替わりにウェブの将来にむけた開始点として採用するよう勧告した。 今回は W3C も同提案を受け入れ、新しい HTML ワーキンググループが結成された。 2008 年 1 月、HTML 5 の初めての草案が公開された。

HTML 5 の将来
HTML 5 の支持者たちは、HTML 仕様を発展させるこれまでの努力に付きものだった一連の問題を解決する決意を固めていた。 同ワーキンググループは、後方互換性の実際的な必要性、仕様と実装を一致させることの重要性(守られもしない法律を作りだすのではなく)、そして個々のベンダーが完全な相互運用性を実際に達成できるように、仕様を明確かつ曖昧さを残さないようにする必要性を確認した。
HTML 5 は、Windows XP から Vista へ、とか、IPv4 から IPv6 へといったような困難で大きな飛躍などではない、ということを指摘しておくのは大切なことだ。 GoogleMark Pilgrim によれば、HTML 5 の仕様は、ブラウザーがサポートできる詳細な機能のコレクションでしかない、という。 実際、すでに地形位置情報、ローカル保存、オフラインアプリ、キャンバス、そして新しいオーディオ・ビデオ用のタグといった機能をサポートしているブラウザーもある。 AppleSafari 4 や iPhone のモバイル Safari ではすでにそうだ。
ブラウザー開発者が拙速に機能を追加し、標準化団体にそれを受け入れるように要請していたようなウェブの黎明期とは違い、今日のブラウザーベンダーらは、競って自分たちのブラウザーでサポートできるように、新しい仕様が定義されるのをイライラしながらも待っているのだ。 誰にでも実装できるような実際的な機能にフォーカスすることで、HTML 5 は、オープンソースベンダーから Microsoft に至るまでウェブ業界にいるすべての人々の注意を獲得している。

ベンダーの HTML 5 への反応
ベンダーの HTML 5 へのスタンスは当然のことながら、その仕様によって彼らがどのような影響を被るのかによっている。 例えば、MozillaOpera の両者は、HTML 5 を押し進めることに非常に前向きだ。というのも同仕様によって彼らは、特定のプラットフォーム(Flash のように)でしか動作しないようなプロプライエタリーなプラグイン開発によって閉め出されることなく、また、特定ブラウザーのためにしかコーディングされていないウェブページでもない、ブラウザー市場という公平な遊び場で競うことができるからだ。
Apple も HTML 5 を押し進めることに非常に前向きだ。というのも同仕様によって同社は、ウェブ上でのリッチなメディア配布で(Flash に対して)競えるようになり、MobileMe でリッチなウェブアプリを作成でき、自社の iPhoneMac プラットフォームでサードパーティ製のリッチなウェブアプリをサポートでき、さらに FlashSilverlight といったサードパーティによるウェブ代替プラグインに関連する非互換製問題やセキュリティー問題にさらされることが少なくできるからだ。
Google も HTML 5 を押し進めることに非常に前向きだ。というのも同仕様によって同社は、デスクトップの代替(Office のような)と有利な闘いができる新しいリッチなウェブアプリを提供でき、すべてのウェブブラウザーにとって公平な遊び場を生み出して競争を促すことができ、YouTube ビデオを提供するにあたって Flash を利用する必要をなくせ、そして同社が従来型の PC オペレーティングシステムの代替として Chrome OS を提供できるようになるからだ。
HTML 5 による Office や Windows への潜在的な脅威にもかかわらず、Microsoft もまた HTML 5 への 参加の必要性を理解している。というのも、自社のブラウザーシェアが今や 65% ほどにまで落ち込んでいるからだ。 MicrosoftIE ユーザーの最大部分は、2009 年 8 月の時点でも、いまだに IE 6 を利用している。 つまり、IE は総ユーザー数では他のブラウザーをリードしてはいても、新しい標準を設定するという点ではもはやリードしていないのだ。 より多くの人が今では IE 8 よりも Firefox 3 を使うようになってきている。両ブラウザーともに昨年リリースされているのにもかかわらず。

Adobe の HTML 5 への反応
HTML 5 にたいする最大の批判者は Adobe だ。 今夏の業績報告カンファレンスコールの席上、HTML 5 が同社にたいしてどのようなチャンスとなるのか、あるいは脅威となるのかについて尋ねられた際、Adobe CEO の Shantanu Narayen は次のように 答えていた。「私が思うに、HTML 5 への挑戦は引き続き、どうしたらブラウザー間で HTML 5 の一貫した表示ができるかになるだろう。 現在話し合われている実施計画について考えた場合、HTML 5 がこれから登場してくるだろう数多のブラウザー間での標準化されるまでに、10 年が過ぎていることになるかもしれない。」
しかし現実には、HTML 標準はすぐさま採用されるか、いっさい採用されないかであることを歴史が示している。 Microsoft が HTML 5 機能のサポート追加してこないかもしれないという恐怖でさえも、同社がすでに示している関心、競争面で必要とあればウェブ標準を適用しようとしてきた同社のこれまでの努力、そしてサードパーティIE を拡張して HTML 5 にある機能の多くをサポートする能力を考慮すると、その正当性を論じることが難しいのだ。 最後の点についていえば、それは実質的に Google Gears がやっていることだ。
Adobe が、先細りしつつある Flash デザイナーのグループの世話をするのではなく、HTML 5 に対応したオーサリングツールを販売した方が儲けられると理解すれば、同社の展望も劇的に変化する可能性が高い。 プラグインのメンテナンスから標準ベースのツール作成へとシフトすることで、同社は、多くは MozillaWebkit からなるコミュニティーによって生み出されたプラットフォームに頼ることができるのだ。さまざまなプラットフォームやさまざまなブラウザー内で自社の FlashFlash LiteAIR ランタイムを実装しようとするのではなく。 というもの、それは明らかにうまくいっていないのだから。

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