AppleInsider: Mac OS X Leopard に向かって: Spaces [Page 2]

Road to Mac OS X Leopard: Spaces [Page 2]

By Prince McLean

Published: Thursday, October 11, 2007 09:00 AM EST


X Window System の仮想デスクトップ

アカデミックな分野では、コンピュータ関係の作業の多くが Unix ワークステーションで行われていた。このシステムでは一般的に MIT の X Window System を用いてグラフィカルなデスクトップを提供していた。 1989 年までに、複数モニターサポートの根底にある Apple の仮想デスクトップ空間は、Solbourne Window Manager によって X Window ユーザにも紹介されていた。このウィンドウマネージャは、大きな仮想デスクトップ空間のなかで X Window アプリケーションを実行していた。 ユーザは、その仮想デスクトップの特定の領域を選択してモニター上に表示できた。これは Xerox の Rooms や Apple の複数モニターサポートを逆転させたものに似ていた。このシステムでは、複数の画面にわたってデスクトップを拡大するのではなく、ひとつの画面で画面デスクトップ世界を超えて複数の領域を見ることができるようにするものだった。

X Window によって人気が出てきた仮想デスクトップにはいくつかのデメリットがあり、MacWindows といった一般的なデスクトップシステムでは人気を得ることができなかった。 まず、アプリケーションが仮想デスクトップに対応している必要があった。なぜなら、アプリケーションが表示領域にないかもしれないという可能性や画面を更新したり、通知をポップアップできないという可能性を考慮しなければならないからだ。 X Window アプリケーションは、ウィンドウのクライアント / サーバーシステムで利用されるようデザインされており、消費者向けソフトウェアと比較して表示に関してより少ない想定がされていた。 その結果、Mac や PC 用のサードパーティ製の仮想デスクトップユーティリティは、既存のソフトウェアとはうまく連携できなかった。

仮想デスクトップにとっての二つ目の障壁は、ユーザにとっても分かりにくいことだった。 技術的な知識を持たないユーザにとって、自分の作業領域をどうやって取り戻して良いのかはっきりした方法がないことから、表示からこぼれ落ちてしまうことにもなりかねない。 複数ユーザやファイル権限というコンセプトも十分に難しい。KVM スイッチを使って、同じ画面上で複数のコンピュータを行き来するとか、エミュレータを使って同じ PC 上で複数のシステムを実行するということも混乱のもとになり得る。 複数ディスプレイという同じく複雑なアイデアは、ユーザにとって利益どころか謎の多い手間となってしまうまでに時間はかからなかった。


Leopard Spaces

仮想デスクトップは長い間 Unix ユーザの間では人気で、CDE タスクバーに目立つように組み込まれた (上図; 数字の付いた四つのボタンで仮想デスクトップを切り替える)。そしてこれが 90 年代にわたって標準的な Unix デスクトップとして機能した。 そのカウンターパートである今日の Linux ユーザも同じく、仮想デスクトップをほぼ自明のものとして受け入れている。 CDE は GNOME (下図上) および KDE (下図下) によってほとんど置き換わったが、両者も同様にメインのタスクバーに仮想デスクトップを切り替えるための機能を備えていた。


Leopard Spaces


Leopard Spaces

しかし同時に、UnixLinux のユーザは技術的に物知りで、複数ディスプレイのなかにおいて何が起こっているのかをコンセプト的に把握し追跡することが得意な傾向がある。 ところが、普段使いのデスクトップ PC ユーザは、それほど頻繁にコンピュータに接しているわけではないので、仮想デスクトップの利点を理解できないでいる。 そして理解できる人たちは、ほどなく仮想デスクトップソリューションが期待通りに機能してくれないという問題にぶちあたった。


Windows の仮想デスクトップ問題

Microsoft は、Windows ユーザのためにサポートされた機能として、仮想デスクトップを実装したことは一度もなかった。 仮想デスクトップの追加はもちろん不可能なことではなく、Windows にこうした機能を加えるためのサードパーティによるハックは数多くある。 ところが、Windows には仮想デスクトップのための標準的な機構が一切存在しないため、アプリケーションは仮想デスクトップを利用するようには設計されていない。そのため、仮想デスクトップをインストール下としても適切に動作しないことがよくある。 このため、多くの Windows ユーザにとって仮想デスクトップは魅力的ではなく、アプリケーションベンダーが仮想デスクトップ環境で自社製品を適切に動作するよう調整する機運が盛り上がらなかったことから、八方ふさがりの状態になってしまった。

Microsoft は確かに、MSVDM (奇妙なことに Microsoft がすでに自社の仮想 DOS マシーンのために使用していた呼称と同じ) と呼ばれる実験的で非公式な Windows XP 用仮想デスクトップマネージャ「パワートイ」を送り出してはいた。 このツールでは、グループ化したウィンドウを最小化したり最大化したりして複数デスクトップをシミュレートし、異なる仮想デスクトップで異なる背景画像を利用できるようにしている。


Leopard Spaces

ところが、MSVDM には X Windows マネージャのための仮想デスクトップ機能がなかった。 例えば、あるデスクトップから他のデスクトップへとウィンドウを移動できなかったり、タスクバーボタンがフラッシュした時、あるデスクトップにウィンドウを固定できなかったりした。 Wikipedia が指摘しているように、「アプリケーション開発者は Windows プラットフォームで仮想デスクトップを想定していなかったために、アプリケーションとの互換性が付きまとった。」

MicrosoftInternet Explorer でさえ MSVDM に対応していなかった。 複数のデスクトップに複数のブラウザを開いている場合、ひとつを閉じると不意にすべてを閉じてしまっていた。 MicrosoftVisual Basic や Virtual Studio .Net も MSVDM を使うと不具合を起こし、PC に処理負荷がかかっている場合、MSVDM は時として切り替え途中で固まり、ユーザはなす術もなく立ち往生するだけだった。 Word と Excel とを切り替える場合にも、ツールバーが消え失せて、それを解決する手だてはなかった。 MSVDM と Spaces とはまったく異なるのだ。

面白いのは、Microsoft は 2001 年に Windows XP で複数の物理モニターを初めてサポートしていることだ。AppleMac で同じ機能を提供した実に 15 年も後のことだ。 このことから、MicrosoftLeopard の新機能 Spaces のような複数デスクトップをサポートするのは近い将来考えられず、もしかすると 2020 年代初めまで実現しないかもしれない。


Mac OS X の新しい Spaces

Leopard の Spaces は、どの仮想デスクトップシステムと同じく、ユーザがウィンドウを開いておくことができるスペースをより多く確保してくれる。 Apple は、他のプラットフォーム同様、仮想デスクトップにつきまとう 2 種類の問題に対処しなければならなかった。 サードパーティ開発者によるサポートとユーザ体験の複雑さである。 このどちらかを解決し損ねても Spaces は単なる興味の対象以上にはなれない。 両者を実現できれば、Leopard Dock の記事で取り上げたような問題を含め、さまざまな問題を解決できる。 それは、Dock の右端にあまりに多くの最小化されたウィンドウが並ぶこと。 Mac OS X Leopard に向かって: Dock 1.6 を参照してほしい。

Mac OS X では、ユーザに複数のアプリケーションで複数のウィンドウを開くようにしむけている。そして、システムではアプリケーション間 (Command (⌘)+Tab という、Alt-Tab を使う Widows から取り入れた操作手法) または特定のアプリケーションのウィンドウ間 (Command (⌘)+tilde。これは Windows ができないことのひとつで、というのも、アプリケーションと開いたウィンドウとの明確で一貫した境界を定めていないことによる。Windows では、開いたウィンドウは時にはドキュメントで、その他の場合にはアプリケーション内のドキュメント群だったりする他mだ。 Windows 用の Office では、そのウィンドウが開かれた経緯によって、開いたウィンドウはどちらか一方になる。) で切り替えができるような機構を備えている。

Apple はまた開いたウィンドウをグラフィカルに切り替えられるように Exposé も提供している。 こうしたメカニズムによって、ユーザはウィンドウを沢山開いて、それらが重なった状態でも作業できるようになっている。 対照的に、Windows ユーザはタスクバーの制限によって身動きが取れず、最大化ボタンを使ってあらゆるアプリケーションを画面いっぱいに開くようなやり方に慣れてしまっている。これは、すべてのアプリケーションがテキストがスクリーンいっぱいに広がるテキストベースの DOS から連綿と残る考え方だ。 この Windows 環境では、数多くの開いたウィンドウで画面を効果的に共有したり、すべてを表示したりするには向いていない。

Mac OS X の Dock では、ユーザは開いたウィンドウを代理のアイコンへと最小化できるが、システムはさらにウィンドウを一度に開いておけるような余地を残しており、機能しているウィンドウセット間を瞬時に切り替えられるようにしている。 これこそが、仮想デスクトップが解決を目指している問題だ。 Mac のユーザベースが、ノートブックユーザの多くに見られるように、Quark や Photoshop から iLife へと移動するにつれて、仮想デスクトップといコンセプトが、複数モニターサポートに取って代わってより理にかなったものとなってきた。


ページ 3: サードパーティによる Spaces のサポート; Spaces のユーザアクセシビリティ; Space 内にあるものすべて; Spaces の交換; そして Spaces のリーチ。

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