AppleInsider: Mac OS X Leopard に向かって: iChat 4.0

Road to Mac OS X Leopard: iChat 4.0

By Prince McLean

Published: Tuesday, October 16, 2007 10:00 AM EST


AppleMac OS X 10.5 Leopard で、ビデオ効果と画面共有を導入して、 iChat インスタントメッセージングに面白い方向性を与えてきた。 ここではその新機能を見ていこう。

このレポートは、インスタントメッセージングの起源、歴史、そして成熟の過程にかなりのスペースを割いている。 時間のない人、あるいは Leopard で予定されている機能に興味のある人は、本レポートの ページ 2 へとジャンプされたい。

iChat の起源
コンピュータ間でテキストメッセージを送信する機能は、最も古くからあるもののひとつだ。 Unixtalk コマンドはもともと同じシステム上のユーザアカウント間でメッセージを送信するためのものだったが、後にインスタント・アルファニューメリック・ページャーのようにネットワーク越しに他のシステム上のユーザも対象とできるように拡張された。
Internet Relay Chat (下図) は、電子メールに似たサーバベースのプロトロコルを利用して、特定ホストへと直接メッセージを送信するというアイデアに基づいて拡張されている。つまり、チャットメッセージが IRC サーバを経由してリレーされるというわけだ。 サーバにログインすると、IRC クライアントはそのサーバでサポートされている、あるいは提携している IRC サーバのネットワクーに分散されているさまざまなチャンネルにあるグループチャットに参加できるようになる。

Leopard の iChat 4.0

AOL の Instant Messenger
80 年代半ば、Source、CompuServe、Prodigy、GEnie、そして Quantum といった、さまざまなオンラインサービスがダイヤルアップによるネットワークキングを通してホームユーザに提供されるようになった。 1985 年 Apple は GE とパートナーを組んで、AppleLink と呼ばれる Macintosh のためのグラフィカルなオンラインサービスを開発した。 GE のネットワークアクセス利用料はあまりに高く、Apple のディーラでなければそのシステムを使えないほどだった。
しかし、機会が熟するにつれて、ゆっくりとながらも、オンラインサービスへのアクセス料も低下していった。 Quantum は Commodore 64 のホームユーザを対象に、Quantum Link と呼ばれる、より安価なダイヤルアップサービスを展開していた。 Quantum Link の特色のなかでも OnLine Messages (下図) は、購読ユーザがそれぞれリアルタイムチャットに参加できるようにしていた。 OLM の送信はプレミアムサービスで、Quantum Link のアクセス料に加えて分単位の割増料金が課されていた。

Leopard の iChat 4.0
Apple は 1987 年に Quantum とパートナーシップを結び、Apple Link, Personal Edition と呼ばれるグラフィカルで消費者向けのサービスを開発した。 このサービスは 1988 年 5 月にリリースされた。 ところが Apple はほぼその直後に、オンラインサービスの開発に興味を失ってしまう。1989 年の末までに、Quantum は独立して同サービスを America Online へと名称変更してしまった。 「Apple and the Origins of the Web: Consumer Online Systems Before the Web」でも指摘されているように、Apple は 1992 年から 1994 年にかけて、短期間ながら AOL とのパートナーシップを復活させて eWorld -- 実質的に Mac ユーザのために America Online を再ブランド化したもの -- の開発を行っている。

Leopard の iChat 4.0
この新しい AOL は、インスタントメッセージングや、他のユーザのオンライン状態を示すバディーリスト (訳注: 友達リスト) というアイデアを普及させた。 AOL や他のオンラインサービスが、電子メールや後のウェブトラフィックのためにインターネットゲートウェイを開き始めると (上図)、AOL はその情報表示システムを Open System for CommunicAtion in Realtime と呼ばれるインターネットサービスとして発展させた。 OSCAR は、その名称にもかかわらず、本当の意味では相互運用のために解放されていたわけではなく、むしろプロプライエタリなシステムだった。サードパーティは常にリバースエンジニアリングを行って代替手段を提供していたものの、AOL は自社の AOL IM クライアント以外からのあらゆる接続を制限していた。

ICQ、MSN、Yahoo!
1998 年、AOL はライバルだった ICQ を買収し、両サービスを統合して同じ OSCAR ネットワークにログインするようにした。 1999 年、Microsoft は独自の MSN Messenger を導入し、Yahoo! が同じく独自の Yahoo インスタントメッセージング製品でそれに続いた。 開かれた標準をベースにした一般的な電子メールシステムとは異なり、これら 3 種類の IM システムは独自の手法を使って、アカウント、メッセージング、そして状態表示を管理していた。そのため、各ネットワークのユーザはお互いに直接メッセージを送ったり、他のネットワークのメンバーがオンラインかを確認することができなかった。
AOL は、Microsoft が両システムに相互性を持たせようとした取り組みを拒絶した。これは、Microsoft が、Office を使って DOS アプリケーションパートナーを、Java を使って Sun とのパートナーシップを、そしてその他のパートナーに対してもしたように、自社の Windows 独占状態を利用して AOL が市場展開できる残りの製品を抱え込み、絶滅させ、息絶えさせようとしているのではないかと恐れてのことだった。この辺りは「How Microsoft Got Its Office Monopoly」に詳しい。

AppleiChat インスタントメッセージング
2002 年、AppleMac OS X 10.2 Jaguar の IM クライアントとして独自の iChat 1.0 (下図) を導入した。 Apple は自社で IM ネットワークを運営するのではなく、AOL とパートナーシップを結んで、iChat で既存の AOL ユーザのオンラインステータスを確認したりチャットできるようにした。 Mac ユーザは、既存の AOL アカウントを使うこともできたし、無料の .Mac アカウントにサインアップして、そのアカウントを AOL IM システムで利用することもできた。

Leopard の iChat 4.0
10.3 Panther リリースの直前、AppleiChat AV 2.0 (下図) のベータ版を発表した。このバージョンには、オーディオおよびビデオチャット機能が追加されていた。 この新機能は Session Initiation Protocol という、Voice over IP およびビデオカンファレンスのためのオープンスタンダードをベースにしていた。 新しい iChat AV 2.0 (下図) は Panther に組み込まれていた。 翌年 2004 年初頭、AOL は自社の AIM 5.5 PC クライアントで SIP ベースのビデオカンファレンスに対応し、MacWindows ユーザとの間で相互運用できるようにした。

Leopard の iChat 4.0
iChat AV か AIM がテキストチャットを送信すると、そのメッセージが AOL の OSCAR サーバを介してリレーされる。 ところが、ビデオチャットを開始しても、OSCAR はオンラインステータスを参照するだけだ。 そして、バディーリストにユーザを見つけると、サーバを一切仲介せずに、直接オーディオまたはビデオチャットが始まる。

オープンなインスタントメッセージング
SIP は Internet Engineering Task Force による成果で、ビデオカンファレンスのための IP ネットワークキングの標準として役立っている。 この標準では、ITU によって開発されたビデオカンファレンス用の古いテレフォニー標準で、すでに開発が打ち切られた Microsoft の NetMeeting 製品のベースとなっていた H.323 に置き換わるものだ。
SIP と並行して、Extensible Messaging and Presence Protocol (XMPP) をベースにした相互運用可能な IM ネットワークキングシステムを実現するために、一般的には Jabber と呼ばれているもう一つのオープンな IETF 標準が開発された。
実質的に Jabber は、ConpuServe、AOL そして閉鎖された企業内システムといったプロプライエタリなメッセージングシステムの代替として標準的なインターネット電子メールプロトロコルが登場したように、AIM、MSN あるいは Yahoo IM といったプロプライエタリな IM システムのオープンな代替だ。 単一企業によって管理されるアカウントからなる中央集権型システムではなく、誰もが独自のインターネット電子メールサーバを設置できるように、誰もが Jabber サーバを設置できる。 Jabber サーバは、ちょうど電子メールサーバがメッセージを転送するように、メッセージやオンラインステータスをインターネット越しにリレーする。
もうひとつ Jabber とオープンな電子メールとが似ている点は、閉じられた IM システムは Jabber へのゲートウェイとなり、メッセージやオンラインステータスをあらゆるネットワーク上のクライアントと共有できるようにする。 AOL、CompuServe そしてその他のプロプライエタリなシステムは、過去にインターネットへのゲートウェイを構築している。その移植性による結果は、より競争力のあるインターネットサービスに購読者を奪われるというものだった。 AOL、MSN そして Yahoo!Jabber に対してオープンな IM ゲートウェイを提供しておらず、替わりにそれぞれの購読者プールを維持しようとしている。
2005 年後半、Google が独自の Google Talk と呼ばれる Jabber ベースの IM サービスを提供し始めた。 その後間もなく、Google は AOL 株の 5% を買収し、今後発表される GoogleTalk では AOL との相互運用ゲートウェイをサポートすると発表した。 こうした展開を受けて、MicrosoftYahoo! を刺激し、お互いのプロプライエタリシステムとの間で相互運用ゲートウェイを発表した。

Leopard の iChat 4.0

AppleiChat AV 3.0 の Jabber
2004 年半ば、AppleTiger に搭載される iChat AV のバージョン 3.0 で、複数のビデオカンファレンスユーザ (上図)、H.264 ビデオ圧縮技術、さらに Jabber アカウントへの対応を発表した。 この新バージョンはまた、iChat アイコンから AOL の走る人のロゴ (下図) を取り除いている。

Leopard の iChat 4.0
iChat AV 3.0 は 2005 年初頭 Tiger と共にリリースされ、店頭販売時点で GoogleTalk との互換性を備えていた。 MicrosoftYahoo! が独自の Jabber ゲートウェイを構築するまで、iChat ユーザは次のどれかをしなければならない。

  • これらシステムに特化して作成された別個の IM クライアントを利用する。
  • 複数のプロプライエタリネットワークに対応した Adium などのマルチチャットクライアントを利用する。または、
  • プロプライエタリなシステムにあるアカウントに自動的にログインし、そのシステムあるいは別の Jabber サーバへとメッセージをリレーできるサーバゲートウェイを利用する。

AppleGoogle の両者は、一部で機能が重複している JabberSIP との間の相互運用性を出そうと作業を進めている。 オープンな VoIP オーディオおよびビデオメッセージングの爆発は、プロプライエタリな IM ベンダーにとっては脅威であるものの、世界の電話、長距離・携帯電話市場へも割って入っており、あらゆるものをインターネットベースのトラフィックに置き換えている。 既存の VoIP 市場は現在、eBay の Skype といったプロプライエタリなシステムによって独占されている。
Jabber および SIP をベースにしたオープンな VoIP によって、従来の独占電話会社や携帯電話用の周波数を持たない企業は、インターネット基盤による洗礼を受け退場していくことになるだろう。 こうした動向を受けて、Google は来年初頭にオークションにかけられるラジオ周波数を真剣に検討するようになっている。

ページ 2 / 2: LeopardiChat AV 4.0; ドキュメント共有; 画面共有; テキストチャット機能; そしてビデオカンファレンス機能。