原文: Road to Office 2011: New looks, support for Exchange, VBA [Page 2]
By Daniel Eran Dilger
Published: Thursday, May 6, 2010 04:45 PM EST
新機能: 刷新された Outlook クライアントでの Exchange サポート
Microsoft はようやく Office での Exchange サポートを改善し、Entourage アプリをまったく新しい Outlook にしようとしている。Outlook は 10 年以上も Mac から姿を消していた。
もともとの Outlook for Mac クライアントは、ちょうど Windows バージョンの Outlook がそうだったように、Microsoft のプロプライエタリな MAPI を利用して Exchange Server と通信していた。 問題は、MAPI はセキュアではない RPC の寄せ集めのようなもので、そのほとんどが Windows API に縛られていたことから、機能をそのままにセキュリティを保った状態でクロスプラットフォームを実現するのはほとんど不可能に近いまでに困難になっていた。 MAPI はサードパーティが実装するのは実質的に不可能で、あまりに複雑であるため Microsoft でさえ自社の Mac クライアントでそれをサポートしたがらなかった。
2000 年になると Microsoft は Outlook for Mac(それは停滞していた Classic Mac OS アプリだった)を断念し、インターネットの標準である POP と IMAP を使ったネイティブな Carbon アプリとして新しいスタートを切るという決断をした。 (Entourage はほとんどが Outlook Express for Mac をベースにしていたが、それ自体も Apple の Claris Emailer をベースにしていた。これは Apple から Microsoft へと流れていった開発者らの才能によってもたらされたものだった。) Entourage の問題は、インターネットメールで標準的な IMAP プロトコルを使っていたために Exchange Server の数多くの機能が利用できなかったということだった。 加えて Microsoft は最近、Exchange での標準設定として IMAP を無効にしはじめている。
Microsoft は、Entourage で WebDAV を経由してカレンダーや連絡先情報へアクセスできるようにすることでこの問題に対処した。この WebDAV とは、同社が Outlook Web Access や Windows Mobile デバイスでリモートに Exchange にアクセスできるようにするために開発したものと同じメカニズムだ。 ところが、WebDAV では Exchange の高度な機能を一部サポートしておらず、大したパフォーマンスも実現していない。 Microsoft は以来、Exchange への接続方法としては WebDAV を推奨していない。
Exchange 2007 以降 Microsoft は、古い MAPI と WebDAV から離れて Exchange Web Services を導入してきた。これはクライアントがより基本的な XML と SOAP を経由して Exchange と通信できるようにする。 EWS とは、Apple が Snow Leopard に加えて Mac OS X のアプリが Exchange とやりとりできるようにするテクノロジーだ。 これまで Mail、Contacts、そして Calendar は WebDAV を利用してきたが、きちんと効率的に機能しなかった。
EWS はまだ MAPI(Outlook for Windows で使用されている)のレベルには達していないが、かなりいい具合に機能する。 Public Folders のサポート(Microsoft は軽視しているものの、Exchange Server を使用するショップの多くが未だに利用しているもの)、委任機能、最近更新された項目のみを同期するための「オンラインモード」のサポート、あるいは「配布グループ」の連絡先の使用など、いくつかの機能を引きずっている。
Office 2011 の新しい Outlook for Mac は、ちょうど Apple の Snow Leopard アプリケーションと同じように EWS を利用しているようだ。 もとの Entourage は WebDAV を利用しており、恐ろしいまでに遅かった。 Microsoft は以来、EWS を利用するためにパッチを当てていので、Entourage と新しい Outlook との間の差は、一部のユーザが思い描いていたような、地球が崩壊するほどのものではないだろう。
新しい Outlook アプリケーションは新しい Cocoa アプリケーションとしてゼロから書かれているため、Office スイートの残りの部分のように古びた Carbon アプリケーションを暖め直して少しだけネイティブっぽく見えるようにしたのではなく、より Mac のアプリケーションらしく動作する、洗練されたユーザーインタフェースを持っているという点で Entourage よりも優れている部分があるのは確かだ。
特にそのツールバーは、非標準的なインターフェースを使うことが習わしになっている Office が利用しているような場違いなツールバーのような細長い板ではなく、ドラッグ・アンド・ドロップによるカスタマイゼーションができる標準的な Mac OS X アプリケーションにより近い動作をするようになっている。 加えて、新しい Outlook for Mac ではユーザが自らの Windows .PST ファイル(ローカルに保存されたメールボックスを含んでいる)を Mac へと移動できるようにしている。これは、これまで Entourage ではインポートできなかったものだ。
全般的に Office 2011 は現在 Office 2008 よりも 40% ほど大きい。 新しい Cocoa ベースの Outlook は、それが置き換えることになる Carbon ベースの Entourage アプリケーションよりも同じくらい大きい(beta 2 のインストーラは Outlook を Entourage と表示し続けているが、実際には新しい Outlook アプリをインストールする)。
新機能: VBA サポート
新しくなった Outlook に加えて Office 2011 アプリケーションには VBA マクロへのサポートも加えられている。これは、Microsoft が Office 2008 を市場に送り出した際に廃止したものだ。 当時 Microsoft は、同機能はほとんどの Mac ユーザにとって重要ではなく、それを削除したのは主に Office 2008 を Intel Mac をサポートする Universal Binary するために必要であった、と説明していた。
Microsoft の説明によると、「Macintosh VBA コンパイラ[レガシーな Office コードベースによる]はもともと、はるか以前の PowerPC ベースの Macintosh のためにデザインされてモノであって、Intel ベースの Macintosh 上では大幅な変更を施さない限り動作せずしない、とのことだった。 VBA マクロコードはランタイム時にコンパイルされ、コンパイラコードである VB エディタコード、そして VB フォームコードは、広範囲にわたるプログラミング作業なくして Intel ベースの Macintosh へは変換できず、そうなると Office 2008 のユニバーサルバージョンに大幅な遅れが生じかねなかった。
「VBA の Microsoft Office for Windows バージョンは、Mac OS とは互換性のない Windows マシーンアセンブリの実行に依存しているため、直接 Office 2008 で利用することができない。」
Microsoft は、この変更によって影響を受けるユーザは、ドキュメントのワークフローを自動化する代替手段として AppleScript の利用を探るよう勧めていた。 「VBA が無くなることでもっとも影響を受ける人々は、Office のためのクロスプラットフォームなプログラミング性を必要とする人だ」と Microsoft は言っていた。 こうした人たちは Office の 2011 バージョンで VBA が復活したことを喜んでいるはずだ。
このシリーズの他の記事:
Microsoft Office 2011 for Mac への道: 新たな希望
Mac における Office の歴史について興味のある方は、AppleInsider による Road to Mac Office 2008 シリーズ の最初のセグメントを参照のこと。