AppleInsider: Apple の iPhone: 初期 (ただし詳細な) レビュー Page 3

Apple's iPhone: an initial (but in-depth) review [Page 3]

By Daniel Eran Dilger

Published: Monday, July 2, 2007 09:00 AM EST


電子メール、メッセージング、そしてネットワーク

iPhone は「企業レベルでの電子メールとは互換性」がないというありふれたミームにもかかわらず、「Using Apple's iPhone in the Enterprise」にあるように、iPhone では標準的な POP および IMAP 電子メールへはまったく問題なくアクセスできた。会社の IMAP 電子メールサービスへリモートからアクセスできないユーザは、内蔵の VPN クライアントをつかってオフィスにアクセスしてみてほしい。

まだテストをし尽くした訳ではないが、iPhone は、デスクトップ版 Mac OS X と同じ PPTP および L2TP VPN クライアントソフトウェアを提供するようで、両者とも同様の結果を得られるのではないかと思われる。 非標準の VPN クライアントを必要とする企業の VPN システム、特に、Cisco や SonicWall といった貧弱な Mac サポートしか提供していないベンダーによるハードウェア VPN は、iPhone のソフトウェアで動作する可能性は低い。 Windows Server とともに出荷されている MicrosoftPPTP VPN ソフトウェアは、Mac 内蔵のクライアントでもうまく動作するようで、そのため iPhone でも動くはずだ。 一旦 VPN トンネルを経由して会社のネットワークに接続してしまえば、iPhone ユーザは、あたかも実際に会社のプライベートな内部ネットワークにあるロケーションから繋いでいるかのように、電子メールにアクセスできるはずだ。

電子メールアプリケーションそのものは、モバイルデバイス上でこれまで目にした最高の電子メールクライアントだ。 ソフトは HTML メールや添付された画像ファイルをサポートし、他の iPhone やコンピュータユーザに向けても簡単にメッセージを送れる。 メールの返信や転送をサポートしているものの、全員に返信するというオプションが存在せず、Cc: や Bcc: に含まれている複数のアドレスに宛てたメールへの返信が面倒になっている。

iPhone そのものにはスパムフィルタがなく、ユーザは会社やサービスプロバイダ側のスパムフィルタに頼るしかない。 スパムに困ったユーザは、別途のプライベートアカウントを経由したメール転送を設定することもできるが、この場合、既知のユーザからのメールしか転送できない。 Mail にはまた、一括削除や複数選択の後の一括削除というオプションがなく、スパムの削除が項目ごとの作業になってしまっている。

iPhone のインターフェースは、課金ベースの SMS メッセージングではなく、無料の Mail を利用するよう奨めている。 Web ブラウザは URL を「共有」して、電子メールに挿入できるが、その URL をテキストとして編集するオプションはない。 メモ帳は、内容のテキストを Mail へと一発で転送できるボタンを備えているが、SMS として送信するためのオプションはない。 iPhone は、それ以外にテキストをコピーする機能を持っていないため、標準では SMS でメッセージを送信できず、替わりに SMS テキストを手で入力しなければならないようになっている。

電子メールはまた、ほぼ無制限のテキストコンテントを提供しているものの、SMS はメッセージあたり送信できるのが 160 文字までという制限がある。 iPhone は電子メール一通につきわずか一枚の写真しか「添付」できない。というものの、直接複数のファイルを添付するための手段がないからだ。ユーザは、Camera アプリケーションから写真を選択して電子メールにしなければならない。 Camera から Mail 以外の他のアプリケーションへと送るためのオプションが、写真を背景の壁紙にするか特定の連絡先に割り当てる以外に存在しない。

多くのスマートフォンでは、インライン画像のある電子メールをサポートしておらず、そうした宛先に対して電子メールで写真を送るのはやや気の利かないものになっている。 よりシンプルな「多機能携帯」は、写真が貼付されたメールを一切受け取ることができない。 このため、多くの電話が SMS メッセージングのマルチメディア版である MMS をサポートしているのだ。


iPhone

ただし、SMS も MMS も共に、携帯電話業界にくくり付けられており、ほぼ全てのことが可能なデータサービスではなく、メッセージあたりの請求がなされている。 iPhone は、他の携帯電話ユーザに向けたテキスト SMS をサポートしているものの、MMS を利用したテキスト付き写真を一切サポートしていない。 受信した SMS メッセージは、電話がロックされているときでも、メインスクリーン上に透明なオーバーレイとして表示される。

内蔵の Camera アプリケーションで撮影した写真を送るには、ちょうどデスクトップコンピュータのように、iPhone は Mail を利用する。 希望としては、より多くのモバイル機器が標準的な電子メールクライアントをサポートするようになって、SMS が消えてくれることだ。

iPhone は AOL Instant Messaging や Skype VoIP 音声チャットもサポートしていないが、SMS 同様、プロプライエタリなシステムが完全に駆逐され、オープンな JabberSIP ベースのチャットクライアントの両者が、AppleiChat クライアントのように、インスタントメッセージと音声チャットの両方を扱えるようになることが理想だろう。

一部には、AT&T の SMS ビジネスモデルを支えるために、AppleiPhone 向けには iChat アプリケーションを提供しないとの合意をしているとの推測がある。これによってここのメッセージに割り増し料金を課すことができる。 すべての AT サービスプランには、200 件のテキストメッセージが含まれているが、30 歳未満の若年層であれば、ひと月に 1000 件以上のメッセージを発信するくらいなんでもないはずで、AT&T が絶対に手放したくない特別な SMS プランが必要となる。 同時に Apple は、iPhone でテキストメッセージを送るために回り道をしなければならない程度までに SMS クライアント周辺にまで追いやっている。 iPhone は何気なく、ユーザをことあるごとに Mail を使うようにしむけている。


新しい PDA:連絡先情報、そしてカレンダー、そしてデータ同期機能

携帯電話が 2002 年頃にシンプルなスケジューラ機能を搭載し始めた時、独立して動作する PDA の市場は瞬く間に干上がっていった。 それでもハイエンドなスマートフォンは、モバイルカレンダーやコンタクトアプリケーションの傑出した例を送り出すような素晴らしい仕事を成し遂げていない。 多くの電話が、PC とどのようなデータを同期できるのかという、同期や制限をめぐる問題を抱えている。

iPhone は、Apple がこれまで独自の Sync Services と iTunes で成し遂げてきた成果を拡張した。 iPhone は、携帯電話をオーソライズするにあたって必要な iTunes とのみ同期する。 ユーザは、手動では楽曲や映画をコピーできず、楽曲ファイルにたっては iTunes 内部でも個々にコピーさえできない。iTunes が行うのは、選択されたプレイリストと楽曲を同期するだけだ。

iPhone をディスクデバイスとしてマウントする方法も存在しない。 どこにも管理するためのファイルは存在せず、ファイル名も一切なく、フォルダも一切なく、そして iPhone の世界にはディスクも一切ない。

iPhone はまた、BluetoothWiFi 経由でも一切同期できないようになっており、同梱の iPhone 用ドックや iPod USB ドックコネクタケーブルが必要になっている。 典型的に WiFi を経由した 6-20 Mbit/sec での同期はよいアイデアのように見えるかもしれないが、USB 2.0 の 480 Mbit/sec と言うスピードよりははるかに遅い。 Bluetooth 2.0 EDR は、3 Mb/sec という最高速度を秘めているが、さらに遅く、メディアファイルの同期はまったくポイント外れになってしまう。 ただし、連絡先情報やカレンダーデータの Bluetooth によるデータ同期は、将来のリビジョンではいくぶん現実的と言える。

ワイヤレスによるデスクトップ同期における真の問題は、iPhone にはあまりに多くのものを同期しなければならないと言うことだ。 大きなメディアファイル、ブックマーク、アカウント情報、その他のデータを含めると、デスクトップ PC と一部をワイヤレスで同期したとしても意味がない。 いずれにしても iPhone は定期的に再充電しなければならない訳で、充電の合間に漸次的にデータの一部を同期するためにほとんど意味をなさない。

さらに、そもそもなぜワイヤレスでデスクトップとワイヤレスで同期しなければならないのか? 替わりに定期的に WiFi 経由でインターネット越しにデータを同期してしまえばよいではないか? Mail はすでにこうしたことをしているが、iPhone の Calendar やコンタクト情報は現時点ではインターネット越しにサーバと同期する能力を備えていない。 特に AppleLeopard Server でカレンダーやディレクトリサーバ市場に寝室し始めている今、この先のソフトウェアアップデートで変更がされるはずだ。 Apple はまた、iTunes とは別に .Mac 同期との統合に道を開く可能性が高く、そうなると iPhone はカレンダーの内容を、ローカルでのデスクトップ同期ではなく、Web 越しに直接 .Mac スケジュールと同期できるようになる。

そうなるまで、iPhone の Calendar およびコンタクトは iTunes と USB を経由した同期となるだろう。 一方 PC では、Mac 版では Mac OS X に同梱されているアプリケーションと同期するところを iTunesOutlook と同期する。 Leopard では、iCal がシステム全体に対してカレンダーデータの保存先となり、コンタクト情報に関しては Address Book の位置づけと同じように、あらゆるアプリケーションからイベントデータへとアクセスできある。 Leopard では、メモ帳も、デスクトップとの同期をスケジュールに組み込める。 スケジューラデータで他に欠けているものは To Do イベントで、iPhone にはまったく存在しない。 これは恐らく、iPhone もまた Leopard で更新された To Do アーキテクチャを待っているからで、この新しくなった機能もまたシステムワイドなカレンダーストアへと統合される予定だ。

iPhone の Calendar アプリケーションは洗練されており、見た目もすっきりしている。 一日の予定を奇麗な旅行日程表のようなリストで表示し、さらには一日ごとあるいはひと月ごとのカレンダー表示も可能だ。 日にちごとの表示では、一日が一時間ごとに区切られており、イベントは iCal のようなイベントの長さに合わせたバブルとして表示される。 月ごとの表示では、月ごとのカレンダーが追加され、一覧表示ではシンプルにその日のイベントを簡潔なタイムシークエンスとして表示する。

コンタクト情報は iPhone のホームスクリーンには表示されない。これは Phone ページの下に表示される。 コンタクト情報は、iPod の楽曲と同じスタイルで表示され、長いリストでも簡単に閲覧でき、必要な名前を探し出せる。 コンタクト情報を直接探すためにキーボードを呼び出す方法はない。 画面右側に小さなアルファベットの一覧があり、これを使ってジャンプできるようになっているが、指を使った画面スクロールが非常に早いので、名前を見つけるのはそれほど難しくはない。 ただし、この方法だとたくさんのリストを目にしなければならないが。 普段よく電話をかけるユーザのリスト以外では、指を使った検索以外の方法で名前を素早く呼び出す方法はない。

Phone の下にあるコンタクト情報の隣には Recent の一覧があり、最近電話をかけた宛先が表示される。 繋がらなかった通話は赤で表示され、専用ボタンで別途表示できるようになる。 おかしなことに、Recent の一覧では電話を相手側にかけたのか、それとも相手からの電話を受けたのかが分からない。 Recent リストにある名前を触れると即座にその人物に電話をかけることができる。 通話の詳細を確認するためには、さらに別のアイコンをタップして、その通話者のコンタクト情報を出し、その連絡先への最近の通話を日付と時刻順に表示された一覧を呼び出さなければならない。 ここでは、各通話の通話時間は記録されないが、記録されると便利だろう。

最近の通話が受けたものか、かけたものかを判別するためのわずかなヒントは、実際のコンタクト情報のページにあるだけで、最近の通話一覧そのものにはない。 コンタクト情報のページに複数の自宅、会社、そして携帯電話番号が登録されている場合、そのコンタクト先が実際にはどの番号からかかってきたのかは分かりにくく、繋がらなかった呼び出し番号が赤色でハイライト表示がされるものの、完了した通話は青色で表示される。 電話をかけてきた人物の番号がお気に入りページに追加された場合、星マークでそれが分かるようになっている。

こうした細部へのこだわりから、iPhone が初めてのエディションではなく、3 から 4 エディションを経ていることが伺える。 また、実機を触ったこともないのに「あまり出来の良い電話ではない」と言い切ってしまうような人々の信憑性をも消し去ってくれる。


iPhone


電話としての iPhone

電話として iPhone は、最高でとっても使いやすい。 ベーシックな GSM 携帯電話というだけではなく、GSM SIM カードを使ってAT&T のモバイルネットワークを利用できるハンドヘルドコンピュータでもある。 多くの人が制約を回避しようとしているが決して簡単なものではない。 iPhone のソフトウェアイメージは暗号化されており、ユニットはアクティベーション時に、内部ソフトウェアと iPhoneGSM SIM カードとを一体化する。 つまり、iPhone の SIM カードは他の GSM 携帯電話でも利用できるものの、ユーザが既存の SIM カードを抜いてそれを iPhone に刺すことはできないということだ。

既存の SIM カードにコンタクト情報を保存しているユーザは、アクティベーション時にアカウントを転送する前に、コンピュータと既存の携帯電話を同期しておく必要がある。でないと、iPhone が SIM カードに保存された電話番号を統合しないからだ。card's stored numbers.

iPhone のなかで特に魅力的な新しい、コンタクト情報と統合されたビジュアルボイスメール機能、さらにカンファレンスコールへと統合する設定が非常にシンプルな設定方法によって、iPhone はよりベーシックなスマートフォーンとはレベルの違うものになっている。 私が所有している Palm Treo では、二番目の呼び出しを切るために、今までの通話まで中止せざるを得ないという機能のために、私を狂気の淵にたたせてきた。 iPhone ではオプションが読みやすくなっており、iPhone を実際に携帯電話として使うにあたっても非常にシンプルで、より高度な機能も非常にアクセスしやすくなっている。

電話機能そのものは非常に音質が良いものの、私がテストした状況では、ボリュームを最大にしても大きすぎるということはなかった。 私の耳に問題はないので、一部にはよく聞こえないという不満を感じる人もいるかもしれない。 同梱のヘッドフォンを使えば、音はもっと聞きやすくなる。 いずれの場合でも、私は大声で話す方ではないのだが、私の声がよく聞こえないという人はいなかった。 これまで携帯電話でヘッドフォンを使ったことがなかったが、音楽プレーヤーが統合されたことで、ヘッドフォンは魅力的なオプションになっている。 Apple の $130 Bluetooth ヘッドセットはまだレビューできていない。

iPhone のスピーカーは音質がよく使いやすいが、これまたそれほど大きな音が出ない。 iPhone ではカンファレンスコールが非常に簡単にできるので、他の電話でよりもはるかに頻繁にこの機能をスピーカーを使って利用している。


iPhone

現時点では、お気に入りのコンタクト情報に手早く電話できるような、音声によるダイヤルはサポートされていない。 iPhone は、一度に一種類の Bluetoothバイスとしかペアを組めず、現時点では、ヘッドセットのみとなっており、車載したり、一度に複数のデバイスと利用することはできない。 これは、将来のソフトウェアアップデートで変更される可能性はある。

呼び出し音の種類は限られており、モバイルオペレータが大好きな $2 程度で呼び出し音を購入できるというオプションは用意されていない。 iTunes 内の初期の iPhone 同期機能がインターフェースを目にしていた目利きは、 iTunes の内部ビルドには呼び出し音用のタブがあったことを指摘しているが、以降そのタブはなくなっている。 iTunes のライセンスも、ユーザが購入した音楽を呼び出し音として利用できないように変更されており、こうした動きは RIAA によってのみなされ得るものだ。 Apple がレーベルと契約を結び、楽曲や他のオーディオクリップを iPhone で利用できるようにするまで、iPhone の呼び出し音は単純な電子音に限られることになる。

この携帯電話のもっとも大きな難点は、アクティベーションかもしれない。 複数のユーザからの報告によると、ユーザの住む地域に関連して提供される局番を巡って AT&T 側が混乱し、自らのアカウントを転送するために数時間を費やした例もあるという。 AT&T はまた、アカウントが過去に営利目的利用に用いられていたから、とか、既存の電話番号がファミリープランの一部だからという理由で、あまりに長過ぎる待ち時間を一部のユーザに強いていた。

ただ、アクティベーションの際に私の電話番号を Sprint から転送する際はまったく問題なかった。 電話は、AT&T からアカウントの転送が完了したとの通知が来る 24 時間まえから、以前の電話から転送されるような状態だった。 Verizon や Sprint はこの週末に多くの顧客を失っただろうことは疑いの余地はない。

ページ 4:「あり得ないくらい小さい」「あり得ないくらいちょっとした欠陥」「モバイル向けの設計」そして「テキスト入力:Think Different?」

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