AppleInsider: Apple の iPhone: 初期 (ただし詳細な) レビュー Page 5
Published: Monday, July 2, 2007 09:00 AM EST
欠けた機能
やたらに機能を詰め込むよりは実質を優先するという Apple のエンジニアリングへの姿勢を賞賛したものの、この Apple の決定には賛成しかねる人も多いと指摘しておくのは大切なことだ。 新たなソフトウェアアップデートで変更が施される機能もあることも念頭に置きつつ、物議を醸すものから単に Apple による対処が必要だと思われる問題と思われるものまで多岐にわたる、さまざまなハードウェア・ソフトウェア機能のリストを作ってみた。
テキスト編集の欠如: iPhone のテキスト入力をシンプルに保ちつつも、これはいくつか当惑するような挑戦を突きつけている。 例えば、多くの掲示板にあるような、URL の一覧があるのにそれがハイパーリンクになっていない Web ページを閲覧している場合、Safari のロケーションバーに URL をコピーして貼付ける手段がない。つまり、ユーザはリンクを手動で入力しなければならない訳だ。
これは恐ろしく面倒なことだが、iPhone とマウスの付いたデスクトップコンピュータとの違いに関係してくるために、その解決策は簡単ではない。
問題の一旦は、iPhone の入力がマルチタッチに限られていることだ。iPhone には、デスクトップ PC でターゲットにマウスポインタをあわせた際の「カーソルホバー」に直接相当するものがないのだ。 つまり、Web ページの JavaScript ロールオーバーを展開するといったような、単にポイントするだけでクリックするのとは異なる動作を引き起すような方法もない訳だ。
さらに、Shift+クリックに相当するものもない。なぜなら、一方の指でボタンを押さえつつもう一方の指でクリックをするのは難しいからだ。 つまり、ユーザがあるテキスト行を選択して、コピー、カット、あるいはペーストすることなく、ポイントしつつクリックはしない、あるいはクリックしてそこから先のものを選択するという簡単で直感的な方法がないのだ。
テキスト選択や編集のための追加機能やモードを加えて独立した iPhone 用ワープロを作成することはそれほど難しいことではないだろう。だが、それを、スタイラスのような正確なポインタを備えることなくシステムワイドなメカニズムに組み込むとなると話は変わってくるだろう。インターフェース全体が非常に複雑になり、現在は簡単にできるようなこともはるかに難しくなる可能性があるからだ。
私はというと、本能的にテキストのコピーやペーストを求めつつ、大幅に簡素化したインターフェースのためにその機能を捨てるというアイデアとの間で揺れ動いている。 私は、iPhone はより洗練されたテキスト入力機能をもつ Notes+ による恩恵を受けるはずだと考えつつ、それでも Web ページ内のハイパーリンク化されていない URL を選択できないという問題は解決できないことも分かっている。
Palm Treo と比較してみよう。Palm Treo ではテキストの入力やコピー・ペーストにはスタイラスが必要だが、コピーおよびペーストというオプションを可能にしているメニューバーも必要だ。 iPhone には複雑な選択肢のあるメニューバーは一切なく、ページ下部にあるわずかな数のボタンからの選択肢に限られる。 つまり、できることは大幅に少ないものの、理解のためのコストも少なく、複雑さの中で混乱することも少ないわけだ。
つまるところ、テキスト入力の「問題」を「修正」する方法は存在しない。どうしてもそうしたい場合は、スタイラスを追加し、常に表示されるメニューバーを追加して、Palm OS やあるいはもっと悪いことに WinCE のようなものにして、iPhone 全体に貫かれている禅の思想を破壊しなければならない。 ただし、そんなものなら、すでに Best Buy の PDA 売り場にいくつも転がっている。
録音または録画機能の欠如: もう一つすぐに気づくのは、録音や録画の類いの機能が一切ないことだ。 一部には、これは海賊行為への「解決策」であるとかパフォーマンスに起因する問題だと仄めかす人々もいる。 私としては「準備中」のものであると思いたい。というのも、録画機能は携帯電話では非常に便利だからだ。 もし Apple が本当に海賊行為について懸念しているのであれば、iPhone のキャプチャ解像度やフレームレートを制限すればよいだけのことだ。録画機能そのものを無効にしてしまうのは納得がいかない。
さらに、Palm Treo やその他の多くの携帯は、はるかに貧弱で保存領域も小さいにもかかわらず、まったく問題なく録画できていてる。 Treo の場合、1.3 メガピクセルのカメラを備えており、640x480 というそこそこのサイズのスナップショットが可能であると共に 320x240 で録画もできる。 Treo が録画できるビデオはかろうじて満足できるものの、付属の録音機能は多くの場合、非常に貧弱だ。
それに対して iPhone は、十分に明るくきちんと静止した状態であれば、1600x1200 で 2 メガピクセルという解像度で高品質の写真が撮影できる。 また、室内であればあまり光がなくても驚くほど品質の高い写真を撮影することができるものの、他のあらゆるデジタルカメラと同様、暗闇に近い状態では何も撮影できない。
Camera ソフトウェアは、録画、オーディオクリップの録音、そして恐らく、デジタルズーム機能の装備という点からすると大幅なアップグレードが必要だ。 iPhone はコンピュータに接続されると、他の USB カメラと同じように iPhoto 内で処理できるようになるものの、デスクトップ上にボリュームとしてマウントすることはできない。 また、コマンドラインからアクセス可能な隠しディスクとしてさえもマウントされない。
iPod も、内蔵の録音機能をハードウェアとして備えているものの、同様に録音機能を持っていない。 Apple が iPod で限られた品質で録音したり、マイクロフォンを内蔵するのは割にあわないと考えるのは分かるものの、iPhone にはすでに内蔵のマイクが備わっているのだ。 そのため、録音機能がないというのはやや奇妙に感じられる。今後ソフトウェアのアップデートを経て追加されることを期待したい。
一貫性の欠如: iPhone 全体は非常におしゃれで高度に洗練されているものの、ところどころに場違いな雰囲気をもつものがある。 まず、すべてのアプリケーションが水平方向をサポートしている訳ではないこと。 Safari は、水平方向でもキーボードを表示する唯一のアプリケーションであるようだ。 これは、より幅広いアスペクトレシオであればより大きなキーが表示され、不器用なひとでもキーが簡単に押せるという点で重要だ。 すべてのアプリケーションが同じように動作してくれたら素晴らしいものになるだろう。
iPhone に含まれるアプリケーションのルック・アンド・フィールは非常に良く、細部まで注意が行き届いている。 ところが、シンプルさを追求するあまり、iPhone の洗練されたインターフェースからできるだろうと思われるある種のタスクを行う方法が存在しないものもある。 例えば、Weather アプリケーションに追加したさまざまな都市を並べ替える方法がない。 Apple は標準でホームタウンであるクパチーノを含めているので、自分の住んでいる都市を最初に表示したい場合は、まず既存のエントリーを削除しなければならないのだ。 そして、削除したとしても、入力した都市を並べ替える手段はないままだ。もっとも、機敏な動作をするインターフェースでは複数の都市の気象情報を簡単に比較できるようになっているので、並び替えはそれほど重要な訳ではないが。
失われたリンク:3G
iPhone に欠けているハードウェア機能でもっとも顕著なものは、通常第 3 世代あるいは 3G モバイルデータサービスとして言及され、ヨーロッパやアジアでは一般的なブローバンドに近い速度が可能な UTMS モバイルデータサービスをサポートしてないことだ。
iPhone は、GSM は世界全域で幅広く利用されているため、国際ローミングに適した quad-band GSM 電話となっている。 ただし、時には GSM との関連を示す 3GSM と称され、UTMS というぎこちない名前のついた、GSM サービスプロバイダが提供する第 3 世代のデータサービスを一切ポートしていない。
UTMS は、AT&T が合衆国内のいくつかの都市部で展開しているが、iPhone は一切サポートしていない。 3G ネットワークは、より高速なテクノロジーを利用するために特定の無線装置が必要であるため、これはハードウェアとしての制限となる。 将来 UTMS をサポートするには、Apple は iPhone そのものの新バージョンを発表しなければならないだろう。
iPhone で UTMS がサポートされていない理由としてあげられているのは次のようなものである:
- 必要となる受信装置のコストとサイズ
- 合衆国では GSM 3G サービスが広く普及していない点
- 合衆国内で提供されている 3G サービスと他の市場で提供されている 3G サービスとの間で互換性がない点
- 既存の 3G 受信装置と信号処理回路をサポートできるはるかに強力なバッテリー電源が必要な点
Apple が iPhone で 3G UTMS サービスを提供するには、充実しているとは言い難い UTMS の AT&T US 版をサポートするか、より一般的なヨーロッパ版、あるいは両方の周波数をサポートできるようなカスタム -- そのため非常に高額な -- 回路を備える必要がある。
ワールドワイドな 3G UTMS をサポートしている既存の携帯電話は高額で、バッテリーに負担がかかり、さらには Apple にとっては入手が困難なカスタムチップセットを採用している。 一例を挙げると、分厚くごっつい造りで、3G と GSM 4 波に対応した HTC TyTN がある。 Motorola の RAZR V3xx も、特定の市場でのみ動作する複数のバージョンを提供することで、世界の 3G サービスをサポートしている。
一般的に EVDO と呼ばれる、比較的高速なモバイルデータネットワークは、AT&T の合衆国内のライバル Sprint および Verizon が提供している。 iPhone は、これらプロバイダの所有するネットワークではまったく動作しない。というのも、主に提供されているサービスは GSM ではなく CDMA だからだ。
そのため、考慮に入れなければならない要素としては、iPhone が 2.75G サービスと一般的に呼ばれる GSM EDGE ベースの低速なデータサービスを埋め合わせるためには充分に競争力を持った機能を備えているかどうかという点だ。 iPhone が備える際立った Web ブラウザや Maps といったカスタムアプリケーションがあれば、iPhone は EDGE をかつてよりもはるかに魅力的なものにできるが、同機器の Web アプリの性能を発揮させたいのであれば是非とも WiFi ホットスポットが欲しいところだ。
2G Mobile ネットワーク
GSM-GPRS: 50 kbits/sec
CDMA2000: 70 kbits/sec
2.75G Mobile ネットワーク
GSM EDGE: 70-200 kbits/sec
3G Mobile ネットワーク
CDMA2000 EVDO: 180-700 kbits/sec
GSM UTMS: 300-2100 kbits/sec
IP Wireless ホットスポットネットワーク
WiFi 6500-20000 kbits/sec
いかなるモバイルデータネットワークも WiFi ネットワークには太刀打ちできない:
EVDO にとって最高のシナリオでも、EDGE の倍の速度だ。 UTMS はブロードバンドデータサービスを謳っているが、技術的に困難で、合衆国内で利用できる地域は限られている。
GPS がないことも、iPhone バッシングでもっともよく取り上げられる事項だ。 iPhone の大きな画面や美しいグラフィクスからすると、電波を用いて信号の位置を特定し、正確な位置情報を計算する GPS 機能を Apple が組み込み忘れたのは大きなミスであるように感じられる。 GPS がない iPhone は、位置を計算するにあたって基地局に頼らなければならず、その予測制度は GPS に比べると精確さで劣る。
しかし、Apple が iPhone のために作成した Google Maps クライアントは、交差点単位の道案内情報を、衛星写真による地図と共に提供している。 つまり、GPS がなくとも、ユーザの多数を満足させるだけの GPS の代替手段を用意しているという訳だ。 これにより iPhone ははるかに少ない電力で動作できる。 Nokia N95 のような GPS を搭載した電話は、スペック上素晴らしいが、GPS を実際に使った人なら誰でも、GPS を起動しておくと N95 の 4 時間というバッテリ駆動時間が 2 時間にまで落ち込んでしまうことを知っているはずだ。
アマゾン川流域で探検しているユーザなら、N95 を使って 120 分間森の中を移動することができるかもしれないが、私たちの多くは高速道路の迂回路や慣れない街での道案内などで使うくらいで、それなら iPhone の道路ベースの地図や手順ごとの道案内のほうが向いているだろう。 また、N95 に付けられている ~750 ドルという価格から 200 ドルほどを節約できることにもなり、それだけのお金があれば独立した GPS ユニットを購入できてしまう。
GPS はいつの日かもっとバッテリに優しくなるだろうか? 恐らくそうなるだろう。 それまでは、GPS は、大きなバッテリを持てるだけの外部筐体を持つデバイスに任せておいた方が良いだろう。 Apple が Garmin や Tom Tom とパートナーを組んで、GPS ユニットの付いた Bluetooth やドックコネクタを提供するようになるかもしれない。
まとめ
iPhone は、驚くほど緻密に設計され製造された製品で、これまでのハンドヘルドデバイスの基準を凌駕している。 素晴らしい電話だし、iPod の特別な新バージョンだし、見事な Web ブラウザだし、さらに、出来の良いモバイル電子メール機器であるとともにスケジューラでもある。 iPhone によるソフトウェアへの独特のアプローチによって、競合するスマートフォンのソフトウェアの利便性を軽く超えることになった。
iPhone には改善の余地はあるものの、その完成度は印象的なもので、その他の携帯電話のインダストリアルデザインやソフトウェア、同期機能が色褪せて見えるほどだ。 Apple が 4 月のカンファレンスコールで約束したように、ソフトウェアアップデートが提供されるようになれば、iPhone の価値はさらに上昇することになるだろう。
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