AppleInsider: Mac OS X Leopard に向かって: Safari 3.0
Mac OS X Leopard に向かって: Safari 3.0
Published: Thursday, October 18, 2007 09:00 AM EST
Apple は Mac OS X 10.5 Leopard の Safari に、Dashboard との統合、タブウィンドウのスマートなドラッグ・アンド・ドロップ、閲覧履歴のフルテキスト検索などを組み込んで、大幅な変更を施してきた。 ここでは、Safari 3.0 の新機能と共に、オンライン・ウェブブラウザの誕生と成熟を見ていこう。
このレポートは、ウェブブラウザの起源、歴史、そして成熟の過程にかなりのスペースを割いている。 時間のない人、あるいは Leopard で予定されている機能に興味のある人は、本レポートの ページ 3 へとジャンプされたい。
Safari の起源
World Wide Web そのものは NeXTSTEP 上で始まったものの、あらかじめ決められた挙動を設定しハイパーリンク化された文書を転送するというアイデアは、1990 年にインターネットサービスとしてウェブの開発よりも数年前に主流になっていた。
ハイパーリンク化されたテキストやメディアを開発・利用するための初めての主なアプリケーションは、Apple による 1987 HyperCard for the Macintosh (上図) だった。 同システムは、グラフィカルなデータベースのフォームデザイナ、あるいはスピーディなアプリケーション開発システムとして機能した。 Stacks と呼ばれるハイパーリンク化されたカードのコレクションが、単体で HyperTalk により動かされていた。これは、専門知識を持たないユーザでも取りかかれるように設計されたスクリプト言語だった。
1985 年以来 Apple で HyperCard の開発をしてきた Bill Atkinson は、すべての新型 Mac に無料でバンドルすることを条件に、Apple にこのアプリケーションの権利を付与した。 これにより Mac ユーザの間では HyperCard は人気を博したものの、Apple 幹部の歓心を惹くには至らず、結局彼らは開発継続をなおざりにし、やがては廃れさせてしまった。
HyperCard はスピンオフして Claris ソフトウェア群へと組み込まれていった。 QuickTime Interactive と呼ばれるスクリプト化されたインタラクティブレイヤーとして HyperCard を QuickTime へと統合するという計画が 90 年代半ばに始まったものの、結実することはなかった。 製品としての HyperCard の名残は、1996 年の Apple による NeXT を買収につづく Steve Jobs の大掃除の喧噪の中で、やがて QTi と共に忘れ去られてしまった。
HyperCard によるヒント
しかし、HyperCard の遺産は生き延びた。 Apple は、自社の HyperTalk スクリプト言語を、アプリケーション内でのスクリプト可能な動作を構築したり、Automator によるワークフロー、あるいは、現在では Xcode の一部となっている AppleScript Studio を利用した完全なプログラムさえも視野に入れた、Mac のシステムワイドな AppleScript アーキテクチャへと発展させた。 HyperCard はまた、ビジュアルアプリケーション開発、ハイパーリンク化されたメディア、そしてスクリプト化されたプレゼンテーション環境といった一連のプロジェクトを生み出すきっかけともなった。そうしたものの中には次のようなものがある：
- NeXT が 1988 年に発表したグラフィカルで、迅速なアプリケーション開発のための Interface Builder。
- Microsoft が 1991 年に発表した Visual Basic 開発環境。
- Netscape が 1995 年に発表したウェブのための JavaScript。
HyperCard はまた、直接的および間接的に、ウェブそのものの開発も後押しすることになった。
ウェブを編む
WorldWideWeb と呼ばれる世界初のウェブブラウザは、1990 年に登場した。 NeXTSTEP を使う CERN の Tim Berners-Lee (上図) によって開発された同アプリケーションは、HTTP (HyperText Transmission Protocol) を定義した新しい www インターネットサービスのためのクライアントソフトウェアとして、ページをホストする www サーバから URL によってリンク化されたハイパーテキスト文書をリクエストする www ブラウザへ転送する手法として機能した。
Steve Jobs の NeXT コンピュータは、独特に洗練されたスピーディな開発ツールを提供したこともさることながら、NeXT が高等教育機関および高度な数値計算においてニッチな市場を占め、PC がローカル・エリア・ネットワークをようやく使い始めた当時においてオープンなインターネットを完全にサポートしていたこともあり、ウェブの開発にとって中心的な存在となっていた。
Viola: X Window のための HyperCard
同時に UC Berkeley の Pei-Yuan Wei が Viola の開発に着手した。これは、HyperCard の機能を X Window を実行する Unix ターミナルへと持ち込むプロジェクトだった。 「HyperCard のマニュアルを手に入れた私は、それを見て、基本的にはそのコンセプトを取り入れて、それらを [Unix のための X Window] に実装しただけなのです」と Wei は後に説明していた。
Wei は Viola を改造してハイパーメディア文書を配布するためにインターネットを利用しようと目論んでいたものの、その作業は NeXT 上で Berners-Lee がすでに成し遂げてしまっていた。 Berners-Lee の www サービスの HTTP アーキテクチャを採用することで、1992 年には X Window システムのための ViolaWWW ウェブブラウザの誕生へと結実した (下図)。
NCSA Mosaic
合衆国上院議員 Al Gore によって上程され支援を受けた High Performance Computing and Communication Act of 1991 によって、National Center for Supercomputing Applications (米国立スーパーコンピュータ応用研究所) の High-Performance Computing and Communications Initiative (高性能コンピューティング / 通信計画) の発展に財政支援が行われ、対象として Mosaic ウェブブラウザ (下図) も含まれていた。
NCSA の Mosaic ブラウザは、非商用ユーザ向けには無料でダウンロードでき、Amiga や Mac、Windows など消費者向けオペレーティングシステムで急速に利用が広がった。 Mosaic は ViolaWWW などそれまでのブラウザを手本としつつ、人気のコンピュータプラットフォームをサポートし、ウェブページ内の画像をインラインで表示する機能や、技術的な知識を持たないユーザでも簡単に扱えるようにしたことから、ウェブを実際に利用している小さな人口の中ながら、90 年代初頭にはもっとも人気の高いウェブブラウザになっていた。
イリノイ大学アーバナシャンペーン校の学生として NCSA の Mosaic ブラウザの開発を率いていた Marc Andreessen は、1993 年に卒業し、商用の Netscape Navigator を送り出すことを目標に、後に Netscape となる Mosaic Communications を創設した。 Andreessen は、10 年前にカリフォルニアのスタンフォード大学を卒業して Silicon Graphics を立ち上げた Jim Clark とパートナーを組んだ。 Clark は、SGI での経験を生かして、Andreessen が Navigator ブラウザの開発を継続できるようなビジネス計画を考案する手助けをした。
当時既に Mosaic といった無料のブラウザが出回っていたため、Netscape はウェブブラウザ・クライアントの座を諦めて、ウェブサーバ・ソフトウェアを販売することで収益を上げる計画を立てた。 しかし、Netscape 初期の矢継ぎ早の革新、そして、非商用ユーザには無料で提供するという Mosaic の方針を採用したことで、同社のブラウザは瞬く間にウェブユーザの間で新しいスタンダードとなった。
ページ 2 / 3: Microsoft によるインターネットの発見; Netscape の失墜; Apple の CyberDog; Netscape の Mozilla による焦土作戦; Netscape の焼け跡から立ち上がる Firefox; そして Apache の後をつける Mozilla。
