AppleInsider: Mac Office 2008 に向かって: はじめに

Road to Mac Office 2008: an introduction

By Prince McLean

Published: Monday, November 12, 2007 08:30 AM EST


Microsoft の Word や ExcelPowerPointEntourage からなる生産性アプリケーションの標準スイート、Office for Mac 2008 には新機能や改良されたユーザーインターフェースが加えられている。 同アップグレードは、2008 年 1 月のリリースが予定されており、Mac OS X 10.3 Panther 当時の 2004 年以来、Mac にとっては初めての新リリースだ。

このレポートは、ソフトウェアベースのオフィススイートおよび MacMicrosoft Office の起源、歴史、そして成熟の過程にかなりのスペースを割いている。 時間のない人、あるいは Office 2008 で予定されている機能に興味のある人は、本レポートの ページ 4 へとジャンプされたい。

10 年前の 1997 年夏、Steve Jobs は Boston Macworld Expo の壇上で、Apple に自信を取り戻す計画をアナウンスした。 これら計画の中核には Microsoft と契約を交わして、Windows 95 がリリースされる以前の 1994 年以来開発が止まっていた Office for Mac 初の新バージョンを送り出すというものがあった。

Microsoft は最近、開発の遅れから 4 年にわたる歳月の後に Office for Mac の新バージョンを再び導入するという、新しい計画を発表した。 しかし今回 Microsoft は、Microsoft の Office 2008 の価格設定や将来にまで影響を与えるような新しい競争を Apple そのものから強いられている。 生産性アプリケーションの分野でのこの二社間での新たな競争は、消費者にとっては素晴らしいものだ。ここでは、この二社が過去 30 年間にわたって、生産性アプリケーションにおいてライバルそしてパートナーとしてどのように振る舞ってきたのか、そしてそれが今日の新たな競争にどうつながっているのかを見ていこう。


Office の起源

初めてのグラフィカルオフィスアプリケーションは、Microsoft Office ではなく、Apple の Lisa Office (下図) で、1983 年に Lisa コンピュータのバンドルとしてこの世に送り出された。 批評家らは、この Lisa アプリケーションソフトウェアに対して、コンピュータそのものよりも高い評価を送った。 しかし、Apple が新システムと共にソフトウェアの振るスイートを送り出し、生産性スイートのアフターマーケットを殺してしまったことに、サードパーティ開発者らは苦虫をかみつぶした思いを抱いていた。


Office 2008

Apple は、Lisa によってマイクロコンピュータがオフィスビジネス用マシーンの分野へと移行してくれることを願ったものの、9,995 ドルのシステムの売れ行きは、Apple の予測に反して、なかなか伸びなかった。 Apple II が発売 2 年目に 16,000 台を販売し、成功と見なされていた一方で、Lisa は 100,000 台近くも売れたのに失敗だと見なされていた。というのも、1983 年までに Apple II は年間 100 万台を販売していたからだ。

Lisa は予測には満たなかったものの、多くの大規模・中規模サイズのオフィスで共有システムとして幅広く展開され、多数のオフィスワーカーらが、それまでは技術デモでしか存在しなかった、新しいグラフィカルデスクトップ、マウス、そしてウィンドウ化されたコンテンツを目にすることになった。 Lisa は、バンドルされた Lisa Office アプリケーションによるプロジェクト管理や文書発行といったタスクのためのグラフィカルインターフェースの実際的な効果をデモンストレーションした。


Office 2008

Apple は、Lisa の開発と平行して、大量販売および個人を対象とした低価格システムとして Macintosh の開発にも出資していた。 小さな Mac チームは、資源の制限に直面していたために、Mac では Lisa Office のサブセットを送り出したのみだった。しかしこれが、Apple II の VisiCalc 周辺で生まれた市場と同じように、サードパーティソフトウェア開発者らの関心を惹くことになった。 ただ、IBM の 1981 年に発表した DOS PC の背後ではさらなる勢いが生まれつつあり、マシーンを購入する主な理由となるに十分な、WordPerfectワードプロセッサLotus 1-2-3 表計算のように特化したソフトウェアが登場していた。


MicrosoftMacintosh 用アプリケーション

Macintosh プロジェクトを引き継いだ Jobs は、サードパーティ開発者らに働きかけたものの、ほとんど関心を惹くことができなかった。 開発者らは、その大規模なインストールベースから、DOS PC のアプリケーションを作成していた。 Apple の当時最新の 2 システム -- 1981 年の Apple III および 1983 年の Lisa -- は共に、たいした台数を売れないでいた。

そのため Apple の新しい Macintosh にソフトウェアを提供するということは、大きな賭けだったのだ。というのも、特定のガイドラインに沿い、Apple 独特の Mac Toolbox を利用してソフトウェアをどう書くか学ぶための追加投資が必要で、Mac が市場で失敗したとしても、このどちらも DOS や他のシステムに移植することができなかったからだ。

1981 年 Jobs は Microsoft の Bill Gates に近づいて、Mac のための開発を持ちかけた。 両社はすでに Apple II 用 Applesoft BASIC 制作においてパートナーを組んでいたこともあって、Jobs は Microsoft がアプリケーションビジネスに参入したがっていたものの、容赦ない競争相手を前に PC プラットフォーム上で苦しい戦いを強いられていたことを知っていた。 こうしたことから Microsoft は、喜んで他のプラットフォームに対しても前向きな姿勢になっていた。 Microsoft は、Multiplan と呼ばれる VisiCalc のクローンをリリースする準備を進めており、やがて Apple IICommodore 64、および TI-99/4A を対象にバージョンを出荷した。ただし、他ではほとんど関心を惹くことができなかったことから、同社も Macintoshアーリーアダプタという同じような役割へと押し込められてしまっていた。

Apple は 1981 年、Mac が出荷されてから 1 年後にしか PC 用のマウスベースのソフトウェアを発表しないという了解のもと、Macintosh 用に Multiplan をリリースすることと引き換えに、MicrosoftMacintosh のプロトタイプや開発ツールに前もってアクセスできる契約に署名した。 当時 AppleMac を 1982 年に出荷する計画だったことから、この独占的契約は 1983 年後半までの期限付きだった。 その同じ年に Microsoft は、Xerox PARC で Bravo ワードプロセッサを開発した Charles Simonyi および Richard Brodie を雇って、Bravo を Multi-Tool Word と呼ばれる Multiplan のコンパニオンワードプロセッサとして移植した。


MicrosoftDOS 用アプリケーション

1983 年 Microsoft は Multi-Tool Word for DOS (下図) を発表し、PC 用のマウスと共に出荷した。 Apple は、まだ Macintosh を出荷していなかったことから、激怒した。 しかし Microsoft は、Mac の実際のリリース日に合わせて条項を明示的に浮動させるのではなく、独占期間は 1983 年に終了すると設定された Apple との契約にあった抜け穴を利用できたのだ。この詳細については、Andy Hertzfeld が A Rich Neighbor Named Xerox (Xerox という豊かな隣人) の中で指摘している。


Office 2008

そうした状況ではあったものの、Multiplan も Multi-Tool Word (後に Word for DOS と改名) も、Lotus 1-2-3WordPerfect でのやり方に慣れてしまっていた PC ユーザの関心を惹くことはほとんどできなかった。 対照的に、Macintosh 上での Microsoft のアプリケーション -- Multiplan は Word 初のグラフィカルバージョン (下図) と並んで、1985 年に Excel という新しい名称のものとでリリースされた -- は当初ほとんど競争相手にみまわれなかった。

MicrosoftMac では成功したものの DOS では失敗した理由の多くは、MicrosoftMac における Appleユーザーインターフェースガイドラインに従ったため、同社の新しいアプリケーションが同システムの他のプログラムと同じように動作したという事実に起因していた。 一方の DOS PC 上では、それぞれのアプリケーションが独自のキーボードショートカット規則を利用していた。 Excel と Word は同じコマンドを多く共有していたのにもかかわらず、誰もそれに詳しくなかったのだ。 ordPerfect's そんなことから市場は、Lotus 1-2-3WordPerfect といった、すでに馴染んだアプリケーションを使い続けることを好んだ。


Office 2008


初期の Mac アプリケーション

Jobs が Microsoft とパートナーを組んでいる間も、Apple は独自アプリケーションの開発もしていた。 Mac チームは、元 Apple 従業員である Randy Wigginton と契約を結んで、MacWrite (下図) の開発を行い、同アプリケーションを新しい Mac にバンドルした。 Jobs はまた、MacWrite が間に合わなという不測の事態に備えて、第 2 のワードプロセッサを作成する努力を平行してアウトソースした。


Office 2008

この努力は、後に商業製品として単独で販売されることになる、素早く身軽なアプリケーション、WriteNow (下図) として結実した。 Jobs が Apple を去った後、彼は WriteNow を買収して NeXT に転売した。 それが後に NeXT システム用ワードプロセッサとして同梱されることになる。


Office 2008

Macintosh のために開発を行っていた他のベンダーは、Microsoft とは違い、Mac ユーザが程なく求めるようになったヒューマンインターフェースガイドラインを理解できないでいた。 WordPerfect の初期の Mac 用リリースは、あまりにも DOS に似ていたために酷評された。 Lotus が Jazz と呼ばれる Mac表計算を送り出した際も、同じような失敗に遭遇した。 両アプリケーションとも、「Mac ライク」ではないとして Macintosh のプレスからも馬鹿にされ、Mac ユーザが求めるようなものに近い挙動をする新バージョンを出すことになった。

非常に多くが見直された WordPerfect 2.0 を送り出したものの、同社は Apple が MacWrite をバンドルしていることに不満をの述べ、さらには後に NeXT が WriteNow をバンドルしていることにも不満を述べた。 それを受けた Apple は 1987 年、MacWrite などを個別に販売するために、自社の Mac アプリケーションを小会社である Claris へとスピンオフさせた。 NeXT もまた、WriteNow を削除して、TextEdit と呼ばれるよりシンプルで簡素なテキストエディタ (下図) へと置き換えた。これはやがて Mac OS X に取り込まれるようになる。


Office 2008

同じ年の 1987 年 Microsoft は、その春に PowerPoint と呼ばれるプレゼンテーションソフトウェア (下図) をリリースした Mac ソフトウェアの開発会社を Forethought を買収した。


Office 2008


ページ 2 / 4: 自社の Mac アプリケーションを PC に持ち込んだ Microsoft; OS/2Windows を開発した Microsoft; PC にバンドルされた Windows 3.0; 行き詰まった MicrosoftMac アプリケーション: Office 4; そして Windows に注力する Microsoft

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【旧商品】Office 2008 for Mac ファミリー&アカデミック

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