AppleInsider: Windows 7 vs. Snow Leopard: Microsoft のカムバック計画

原文:Windows 7 vs. Snow Leopard: Microsoft's comeback plan

By Prince McLean
Published: Thursday, January 22, 2009 11:05 AM EST

先のセクションで詳しく見てきたように[和訳]Windows 7Mac OS X 10.6 Snow Leopard とは、直接的には競合していない。むしろ、Apple がこれまでそうしてきたように、Microsoft の犠牲のもと Mac ユーザベースが伸長したり、あるいは Microsoft の場合であれば、市場シェアの損失拡大を食い止め、デスクトップオペレーティングシステムでの覇権を取り戻す、というように、それぞれが相手方の競争戦略の一部になっていた。

Windows 7 はどれほどのものか?

MicrosoftWindows 7 で掲げている目標は、脱線した Vista を持ち上げ、軌道に戻すことだ。 Windows 7 そのものは、内部では Windows 6.1 と呼ばれ、実質的には Vista Service Pack 2 だ(Microsoft は、Windows 7 リリース直前に、スケールダウンした Vista SP2 を送り出す予定もしている)。 Microsoft 社の幹部も、Windows 7Windows Vista への漸次的改良であるという事実を隠そうともしていない。CEO の Steve Ballmer も「はるかに進化した Windows Vista」と 呼び、「Windows 7Windows Vista で、ユーザーインタフェースをクリーンアップし、パフォーマンスを改善したものだ」と語っているくらいだ。
MicrosoftWindows プロダクトマネージメントを担当するヴァイスプレジデントである Mike Nash は、Windows 7 を「発展版」と呼び、さらに Vista に「大幅な」改善を施したものだとも語っている。 同社は、対象とする聴衆に応じて、Windows 7 をメジャーリリースとかマイナーリリースとか呼び分けている。 Computerworld は 10 月に、Microsoft 社のロードマップから、Vista リリース後の同社は、4 年ごとのメジャーな新オペレーティングシステム開発(Vista のような)をリリースし、その間にマイナーアップデートを交互に発表するようだ、と書いていた。
Windows 7 パブリックベータをダウンロードした人たちに格好よく見せようと、Microsoft は同リリースに 7000.0 という番号をつけていた。 それはまた Windows 7 が記念碑的リリースであり、当然のことながら「過去最高の Windows」であることを示していた。 ただ、Microsoft(あるいは Apple にしても)が、自社オペレーティングシステムの新バージョンをリリースしておいて、過去のバージョンほどは良くないとは言わないはずだ。
Microsoft が新オペレーティングシステムについて、実際の詳細を明らかにしないうちから、一部のファンサイトでは Windows 7 が「一から完全に書き替えた」としていたものもあり、Vista につきまとっていた問題を解決するために Microsoft がしなければならないこととは、まさに大幅な書き替えであると考えていたことを伺わせていた。 しかし、実際に書き直すとなると、新たな互換性問題を生み出すだけの話で、それはちょうど同社が何年もかけて LonghornVista を開発していた時に気づいたことだった。
Post-haste refresh

それにはまた非常に長い時間がかかることになるが、時間は Microsoft を待ってはくれない。 2007 年には同社は、Windows 7 を 3 年以内に市場に送り出すとしていたが、いまや年内に送り出すべく前倒ししている。 この努力の一環には、市場に汚点を残してしまった Vista ブランドを取り除き、当初は 無視をしようとし、それから Mojave Experiment で挽回しようと試み、さらには Seinfeld キャンペーン で好感度向上のための広告を打ちながらも、結局は 「私は Mac なんかではなく、ただの汎用 PC だ」 との広告で自ら距離を置くような羽目になった悪夢を葬り去ることにある。

Microsoft は今や、初期 Windows 7 にたいして好意的レビューを得ようとなりふり構わない姿勢を示しているが、これは 2 年前に Vista をプッシュしていた時と同じ戦略でもある。 無料で高速なハードウェアをレビューアに送ること、新製品について語っている熱心なアーリーアダプターにパブリックベータを提供すること、さらには、あらゆる経路からすべての機能についてリークすること(変更の可能性があるにもかかわらず)。 過去においても現在においても、この初期ベータレビューは熱意にあふれ、好意的だった。 これは部分的には、パブリックベータは Windows 7 Ultimate であって、ユーザーが CostcoWalmart で購入した新しい PC についてくるような、機能が抑えられた Home Basic バージョンではないからだ。
一般大衆の魚にたいするイメージを変えるために、魚を「Sea Kittens(訳注:「海の猫ちゃん」くらいの意)」と呼び慣らそうとした動物愛護団体 PETA のページから拝借すると、新しい Windows Vista SP2(あるいは、もしかすると「セカンド・エディション」)を Windows 7 と呼ぶことで、色褪せた Vista という名前と新しいソフトウェアリリースとの距離を保ち、Microsoft がその新バージョンのために満額の価格を請求できるようにするという両方の狙いが含まれている。通常なら、サービスパックアップデートを無料で提供してきたところをだ。 新しいブランディングだけで、実際に人々のマインドを変化させることになるかどうかは、まだ分からないものの、これは Apple の新しい Mac OS X 10.6 Snow Leopard と非常にはっきりとした対照をなしている。というのも、同ブランドは、既存の 10.5 Leopard ブランドの上に成り立っていることが極めて明確だからだ。
Windows 7 の戦略

Windows 7 がやってくる時には、Microsoft 社内で Longhorn で夢見られていたような、長大な新機能の羅列はないだろう。ただし、特に Vista に失望したユーザーの要求を満たすものになっているはずだ。 Microsoft による初期のマーケティングによれば、同社は Windows 7 をより高速で使いやすくすることに主眼をおいている。
コンポーネント化された」新しいアーキテクチャや、Microsoft がかつて 2003 年に語りはじめた新しい「MinWin」カーネルといった、これまで Windows 7 関連で話題になった機能は、Vista から取り除かれた WinFS リレーショナルデータベース構想とともに、遠い未来へと押しやられることになった。 替わりに Windows 7 は、人々が文句なく購入してくれるように、今日の Vista を再パッケージしただけのものとなる見込みだ。 つまり、インタフェースのリフレッシュ化と、鬱陶しいメッセージポップアップの削減と、基本的なパフォーマンス拡張、という意味だ。
Apple とは違い、Microsoft は自社のオペレーティングシステムを購入するようユーザーに納得させる必要はない。なぜなら、ユーザーが新しい PC を購入すれば、自動的に新 OS もついてくるからだ。 Microsoft はただ、ユーザーが Windows 7 を削除して、複雑なグラフィックコンポジットエンジンや、それが要求するオーバーヘッドがないことから、同じハードウェア上であればたいていより高速で動作する Windows XP へと戻してしまうことを留まらせさえすれば良い。
Apple は自社の Quartz Graphics システムを 2001 年に送り出し、透過効果や陰影効果で Mac を差別化した。 ところが 2007 年に Vista で同じようなグラフィックテクノロジーを PC に持ち込んだとき、システムがあまりにも多くの RAM を要求し、あまりにも多くのプロセッササイクルを消費することにたいして、ユーザーらは不満の声を上げた。 Windows 7 は、Vista のようにより高い処理パワーを要求していることに加えて、引き続き Vistaカーネルも使用し続けている。つまり、多くのユーザーを苛立たせ、慣れ親しんだ XP へと回帰させてしまうことになったたハードウェアドライバの問題をそのまま引き継いでしまうのだ。
Microsoft としては、Windows の最新バージョンでより多くの PC ユーザーを囲っておく必要がある。そうすることで、アップグレード料金を集められるだけでなく、自社の独占状態を利用して、メディアプレーヤーやブラウザ、検索サービス、その他の新たに登場する市場において、積極的に競争を抑え込むことがができるからだ。 もし PC ユーザーが XP を使い続けてしまえば、彼らが Windows LiveSilverlight を搭載した最新版の Internet Explorer へと移行するのではなく、GoogleFirefoxQuickTime、その他の競合製品を使い続けることになってしまうからだ。
7 における馴染みのユーザーインタフェース

Windows 7Vista ブランドから切り離すために、新バージョンでは、抑制・簡素化され、より控えめな見た目になっている。 この例のひとつに、新しいタスクバーがある。かつては、Windows 95 の時代から受け継がれてきた、複雑で一貫性のないレイヤーから構成されてきたが、今では、実行されているアプリケーションひとつにたいしてひとつのアイコンが表示されるようになった。下図の Mac OS X Dock と似ている。 タスクバーのアプリケーションアイコンを選択すると、そのアプリケーションが開いているウィンドウそれぞれのプレビューを表示する。開いているアプリケーションウィンドウの表示がはるかに小さいことを除けば、Mac OS XExposé にそっくりだ。 Mac OS X Dock のように、アプリケーションアイコンは好きな順番に並び替えることができる。ただし、タスクバーそのもののサイズを変更するための明確な機能はいっさいない。

Snow Leopard vs. Windows 7

タスクバーは、Mac OS X Dock の半分の機能しか備えていない。実際、アプリケーションの起動やドキュメントの展開には、今でもスタートメニューが必要だ。 操作スピードを上げるために、Windows 7 には、最近使用したり、頻繁に使用するアプリケーションの「ジャンプリスト」が用意されている(下図)。 ジャンプリストはまた、ちょうど Mac OS X Dock のように、タスクバーにある実行中のアプリケーションアイコンを右クリックした時にも表示される。

Snow Leopard vs. Windows 7

その他の新機能としては、システムがユーザーの要求を予測して、自動的にウィンドウサイズを変更するものがある。ユーザーが求めていることを予測して、画面上部にウィンドウを広げたり、最大化したりするのだ。 Microsoft はまた、これまでは開いているウィンドウすべてを隠していた「デスクトップを表示」機能も変更し、これによってウィンドウは透明表示されるだけになり、デスクトップはそのウィンドウの輪郭の後ろに表示されるようになった(下図)。 この機能は、Microsoft のプレビューサイトで Windows 7 における重要な新機能として取り上げられている。

Snow Leopard vs. Windows 7

Microsoft はまた、Leopard からいくつか他のアイデアも借用している。そのなかには、Web クリップ(Microsoft は「Web スライス」と呼んでいる)、データ検出機能(Microsoft はこれを「アクセラレータ」と呼んでいる)、スマートフォルダ(Leopard にあるようなスマートクエリー機能はないにもかかわらず、「ライブラリ」と呼ばれている)、そして AppleBonjour に似た、シンプル化されたネットワーク、および書類・デバイス有機能(Microsoft はこれを「ホームグループ」呼んでいる。下図参照)が含まれる。

Snow Leopard vs. Windows 7

ページ 2 / 2: Live による梃入れ;洗練されたデバイス管理;アウト・オブ・タッチ;そして新たなる出発: Vista から離れて

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