AppleInsider: Windows 7 vs. Mac OS X Snow Leopard: 賭け金を挙げる Apple
原文:Windows 7 vs. Mac OS X Snow Leopard: Apple ups the ante
Microsoft が自社の主力オペレーティングシステムを幅広いユーザー層の好みにもっと合わせようとしている間に、Apple は Mac OS X を Mac ハードウェアの魅力の鍵となり、潜在的な乗り換え組に秋波を送るとともに、忠実なユーザーをつなぎ止めようとしていた。 ここで Mac OS X 10.6 Snow Leopard について分かっていることをまとめておこう。
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Windows 7 vs. Mac OS X Snow Leopard: 生まれながらのライバル[和訳]
Windows 7 vs. Mac OS X Snow Leopard: Microsoft のカムバック計画[和訳]
Apple は当初、Mac OS X 10.6 Snow Leopard が 2007 年の 10.5 Leopard の後を受けたマイナーリリースとなり、消費者が目にする機能としては Exchange Server プッシュメッセージ機能だけであるとしていた。 ただし、Apple はこれまでも、将来の計画ではなく、その時点で出荷されている製品に注意を惹きつけようとしてきた。 Snow Leopard のリリースが近づくにつれて(昨夏の WWDC では「およそ一年のうちに」つまり 2009 年夏に出荷すると表明されていた)、より詳しい情報が出てくるようになった。
Snow Leopard の新しいカーネル機能
Snow Leopard は、完全に 64 ビット化されたカーネル で登場する予定で、Vista の主要なカーネル変更で行われたように、デバイスドライバーを「一括して」アップグレードすることが必要とされていた。 Snow Leopard は、Apple によって製造された、比較的限られた数のハイエンド PC でのみ動作するようにデザインされているので、Apple がこれを実現するのはそれほど難しいことでもないはずだった。 Microsoft のように多数のベンダーに歩調を合わせるように要請するのではなく、Apple は Snow Leopard に向けて、カーネルレベルのドライバーのほとんどを自社で供給することになるはずだ。
Microsoft は、2005 年半ばから Intel x86 PC を対象に 64 ビットバージョンの Windows を販売してきたものの、実際の 64 ビット版の採用率は伸び悩んでいた。 Apple は、2003 年の PowerMac G5 のリリース以降、段階的にサーバーや Mac OS X のバックグランドで動作するアプリケーションの 64 ビット化を進めてきた。すべて 64 ビット化された Mac ではすでに 64 ビット Mac OS X ソフトウェアを動作させることができるようになっているのだ。なぜなら、Apple は自社のオペレーティングシステムに二種類のバージョンを用意している訳ではないからだ。現行の Leopard も、ひとつのバージョンで 32 ビットと 64 ビットのコードの両方を走らせているのだ。
Snow Leopard ではこれが改善され、バンドルされたすべてのアプリケーションも含めて、オペレーティングシステム全体が 32 ビットと 64 ビットの両方に対応してコンパイルされる予定だ。 これによって、Core 2 Duo を搭載し 64 ビット化された Mac(つまり、下のチャートにあるように、2006 年以降にリリースされたほとんどのモデル)では、パフォーマンスでおよそ 15% の向上が見込めるのだ。 これはまた、セキュリティーを強固にすることにも関連してくる。 Windows ユーザーもまた、64 ビット化された Microsoft のオペレーティングシステムを実行することで恩恵をこうむることができるものの、互換性の問題によって移行する魅力が下がり、メインストリームの Windows ユーザーは 32 ビットプラットフォームから抜け出せないままなのだ。 Windows 7 でも、64 ビット化は未来のリリースへと先送りされるため、この問題は解決されない。
Snow Leopard はまた、64 ビットをオプションではなく標準にすることでメインストリームの Mac マシーンに 64 ビットプロセッサをもたらしたことに加えて、複数コアや複数プロセッサをあますところなく利用するという、Apple のこれまでの努力の成果をデビューさせている。 Snow Leopard の新しい Grand Central Dispatch が積極的かつ効果的に利用して、パラレルで利用可能なすべてのプロセッサコアにわたってプロセスをスケジュールしており、OpenCL も利用可能となって、開発者らが、システムの GPU 内でしばしばアイドル状態になって寝かされている生のプロセッシングパワーを活かせるようにしている。巧みな機能改善
Apple はまた、Safari 4.0 の新たな登場と、その SquirelFish Extreme JavaScript エンジンだけでなく、QuickTime X を洗練された、非常に効率的なメディア再生ライブラリー(もともとは iPhone に開発されたもの)として宣伝している。 特に前二者は、業界標準をベースにしたデスクトップスタイルの機能を備えた、オープンで相互操作可能な、高いパフォーマンスを備えたウェブアプリケーションを開発している、Google のようなパートナーが提供する、他の HTML5 アプリケーションをはじめ、Apple 独自の SproutCore をベースにした MobileMe や iWork.com を含めた、非常に高度なウェブアプリケーションという新しい波を加速させる助けになるだろう。
Microsoft はこれとは対照的に、自社の Silverlight に賭けている。これは、Flash のような、ウェブ開発のためのプロプライエタリープラットフォームで、相互運用性のためにオープンなウェブ標準を利用するのではなく、ウェブアプリケーションを同社独自の開発ツールやランタイムに縛り付けるためのものだ。
Apple も Microsoft のように、自社のデスクトップオペレーティングシステムを、購読形式のソフトウェアとしてのオンラインのクラウドコンピューティングへの橋渡しにしようとしている。 ただし、そこには異なる点がある。それは、Apple が、完全にプロプライエタリーなサービスを提供するのではなく、ここでもオープンな標準内で、Google のような企業とパートナーシップを結んで開発していることだ。 この戦略は功を奏しているようだ。今や Apple には何百万という MobileMe の有料購読者がおり、これは Mac のインストールベースの 10% を超える。一方の Microsoft は、未だに自社の Live Mesh がベータ版を脱しておらず、自社のウェブサービスをめぐる一貫した戦略をまとめるのに四苦八苦している。
来月 Microsoft は、新しいモバイルクラウドサービスとして SkyBox をアナウンスし、MobileMe(および後には SkyMarket で Apple の iPhone 向け App Store にも匹敵させて)に反撃をくわえたい意向だ。同社は Windows Mobile プラットフォームを持ちながらも、iPhone やさまざまに分裂したハードウェアメーカーやサービスプロバイダーらによって食い荒らされてしまっている。しかも各社共に、ソフトウェア販売やクラウド同期による利益を独占的に Microsoft に譲るとは考えにくい。
タッチおよびオフライン機能
Microsoft は振り返ってみると、iPhone や自社の Surface が発表された 2007 年に、タッチスクリーン機能を Windows 7 に統合するとたびたびアナウンスしていたにもかかわらず、Apple のほうが Snow Leopard でもっと実用的なバージョンを提供することになりそうだ。これは、開発者らが Apple のすべてのノートブック(同社の売上げの半分以上を占めている)にビルドされているマルチタッチトラックパッドを利用できるようにするものだ。
Apple はですでに、同社独自の特定のアプリケーションで動作する、ピンチやズーム機能をはじめ、システムワイドで利用できるマルチタッチジェスチャーを搭載している。 Snow Leopard では、開発者らに向けてさらなるタッチフレームワーク を提供して、革新的な方法でマルチタッチトラックパッドを最大限利用できるようにしつつ、すべての機能は、ユーザーは独自のタッチスクリーンモニターを別途購入することなく利用可能になる。
その他、Snow Leopard 加えられたあまり宣伝されていないものの実用的な機能として、すべての Mac アプリケーションに、Microsoft が Word 内で提供しているような、一種のオートコンプリート・自動修正機能を加える、新しいテキスト処理機能がある。 Mac OS X はすでに、Word スタイルの、拡張されたスペル・文法チェッカーを、システムワイドなサービスとして備えている。 Windows は、こうしたサービスを Microsoft 社製アプリケーションで提供してはいるものの、サードパーティー製アプリケーションにまでは拡張していない。
オープンなソフトウェアアップデート
Microsoft は Windows NT に向けて、NTFS と呼ばれる、同社独自の新しい高度なファイルシステムを開発したが、その他のベンダーがそれを利用して相互運用可能なシステムをビルドできるように、そのテクノロジーを共有したり、ライセンスするようなことは一度もなかった。 その結果、特許に脅かされ、おおよその互換性をもったソフトウェアライブラリーの組み合わせとなり、Linux や Solaris、そして Mac OS X では限られた方法でしか NTFS ボリュームを使えないようになってしまった。 この真空状態をうけて、Sun は独自の高度なファイルシステムを開発し、NTFS のもつ能力のはるか先を行くことになってしまった。
Sun は同社の 128-bit ZFS を OpenSolaris の一部としてリリースし、Apple が互換性のある、読み込みのみの実装を Mac OS X Leopard にビルドできるようにした。 Snow Leopard では、Sun の ZFS が 読み込み・書き込みのできるファイルシステムとして完全にサポートされる 予定で、メインストリームの Mac ユーザーは、そのストレージプール、データ冗長性、自動エラー補正、ダイナミックなボリューム拡張、そしてスナップショット機能を最大限活かすことができるようになる。
Snow Leopard に盛り込まれる予定の、他のオープンなソフトウェア機能改善には、Mac OS X と Linux の双方で利用される CUPS プリントライブラリー が含まれている。これは、Apple が取得し、コミュニティーからのサポートを受けながら管理している。 Apple はまた、オープンソースな LLVM コンパイラー の開発に出資もしている。同コンパイラーは、GCC(GNU C Compiler)の上にビルドされており、最終的にはそれに置き換わることが予定されているものだ。 LLVM はすでに、新コードでの大幅な最適化が施されているものの、同コンパイラーがサポートするパラレル実行のためにとことんまで最適化されているため、Snow Leopard のアプリケーションは、複数コアにわたって Grand Central Dispatch を最大限に活用できるようになっている。Microsoft は、独自のカーネル、ファイルシステム、印刷テクノロジー、コンパイラー、そしてその他オペレーティングシステムのコンポーネントを開発しているため、オープンソースコミュニティーによる進化を利用する機会が限られてしまっている。
ページ 2 / 2: オープンベータはどこだ?;および噂される拡張。