AppleInsider: Apple タブレットへの系譜: タブレットコンピューティングの歴史 [Page 3]

原文: The inside track on Apple's tablet: a history of tablet computing [Page 3]

By Prince McLean
Published: Friday, January 15, 2010 07:45 AM EST
モバイルデバイスの興隆: 2001 〜 2009 年
Microsoft の共同設立者 Bill Gates は当初、残ったモバイルデバイスへの関心を、スタイラス入力を備えた改良ラップトップという新しいカテゴリーに向けたいと望んでいた。 Microsoft はその新しい製品を Tablet PC と呼び、2001 年には Gates が、今後数年のうちに誰もが Tablet PC を第一のコンピュータとして使っているだろうとの予測とともに紹介した。 Tablet PC は、90 年代に登場した Windows for Pen に非常に似ており、 レファレンスデザインから、ハードウェアーパートナーらは Microsoftオペレーティングシステムをバンドルしさえすれば、とくに苦労なくタブレットバイスを作成できた。 しかし、結果も振るわなかった。
一方の Apple は同じ年の後半、はるかに対象を絞った製品を発表した。 iPod だ。 その間に Hawkins は Palm を後にして、より創造的で柔軟性に富んだ PDA メーカーとして Handspring を生み出した。 Handspring は PDA に携帯電話モジュールとペアを組ませたもので、新世代のスマートフォンとして生まれた。 これが Palm の目にとまり、同社は Handspring を買収して、PDA の製造から Hawkins のグループが開発した新しい Treo スマートフォンへと自らのフォーカスを移すことにした。
Palmスマートフォンは、NokiaSymbianバイス(同じく PDA から成長した)や RIM からの新しい BlackBerry スマートフォン(同社のページャービジネスから進化した)、そして Microsoft の新しい Windows Mobile イニシアチブと争うことになった。この Microsoft のイニシアチブも同じく、PDAバイスの製造に同社がおこなった投資を回収し、スマートフォンに秘められた新しい大きな可能性へと応用することを期待したものだった。 Palm は、短期的にリーダーの座を保ったものの、自ら創出を助けたスマートフォン市場のコントロールを失い、やがて 2006 年には MicrosoftWindows Mobile ライセンスするという決断をする。
これと同じ時期 MicrosoftWindows Media ブランドで自社の Windows CE PDA オペレーティングシステムに梃入れをし、iPodApple が成し遂げた大成功の後を追おうとした。 しかし、Windows MediaiPod には歯が立たず、市場で大した牽引力も生むことのないままタブレットバイスと次から次へと濫造した Tablet PC イニシアチブの失敗の上に重なっただけだった。
Apple は 2007 年まで iPodiTunes とで前進を続けた。そして 2007 年には、スマートフォンApple 独自のコンセプトとして iPhone をデビューさせた。 その年 Microsoft は、AppleiPhoneiPod の成功を梃に自社の Windows Mobile スマートフォンプラットフォームのライバルになると気づき、ますます懸念を強めはじめていた。自社のモバイル・コンシューマーラインアップへの暗い見通しのなかに、その将来がちらついていたのだ。
AppleiPhone を投入する以前、モバイルオペレーティングシステムの成功に対する脅威は Microsoft によって制御されており、だからこそ Googleモバイル広告や有料検索結果を守るための努力として、やむなくスマートフォンビジネスへと参入することになったのだった。 Google は 2003 年に Android を買収し、開発努力を続け、2007 年の iPhone 登場後にそれをデビューさせて Microsoft に太刀打ちすることになった。
Apple は、iPhone の最初の三世代を費やして、新しい iPod touch モデルへとプラットフォームを新たに広げ、その新たなスマートフォンプラットフォームの周囲にサードパーティ開発者からなる強固な陣営を築いた。 一方で、Apple 内でとことんまで働いたエンジニアらは、同社を後にして、Palm で新しいデバイスをデザインする手助けをした。 同社オリジナルの Palm OS は、Windows Mobile をライセンスするというその戦略とともに失敗してしまった。Palm Pre 上で走る同社の新しい WebOS を 2009 年に発表したことから、その両者ともが台無しになってしまっていた。
GoogleAndroid への努力によって、有料オペレーティングシステム市場という Microsoft の目標は完全に息の根を止められるとともに、廉価な Palm Pilot によって Apple の Newton が成長していく余地はどこにもなくなってしまっていた。 スマートフォンの分野では、Nokia の市場人気はしぼんでいき、AppleiPhone、RIM の BlackBerry ファミリー、GoogleAndroid プラットフォームからの競争にさらされ、そしてそれよりも小さな影響ながら Palm の WebOS、Windows Mobile の残党、そして Samsung の Bada プラットフォームや HTC の新しい BREWバイスといった新参者もいた。
少なくとも大方の専門家にとっては、熾烈な競争から数社の勝ち組へとプラットフォームが削られていくことが幅広く予測されている。 と同時に、モバイルソフトウェアのコストがほとんどかからないことを考えると、コンシューマーにはほとんど問題を引き起こすことなく、健全な数のライバルオペレーティングシステムが共存するという可能性もある。 80 〜 90 年代の PC では、サードパーティ製ソフトウェアタイトル(そしてそれに依存していたオペレーティングシステム)の互換性が、ユーザーにとってはより大きな問題だった。 今日、コンシューマーが新しいスマートフォンプラットフォームを試してみることを思いとどまらせるような大きな障害は多くはないようだ。 例えば、多くの人が BlackBerryiPhone の両方を使っていたり、以前のプラットフォームでソフトウェアに費やした投資を失う心配をすることなく、Windows MobilePalm OS からモダンなスマートフォンへと移行したりしている。

タブレットの復活: 2010 年
iPhone の発表から 3 度の大ヒットを生み、それぞれの後に iPod touch をもうまく投入してきた Apple は、その新しいモバイルデバイスという分野をどう拡張していくのだろうか、というのがウォッチャーの関心だ。 過去 10 年にわたって Apple は、ミニノートブックからタブレット型ウェブブラウザ(これは最終的には iPhone で利用されている Mobile Safari アプリとして組み込まれている)まで一連のプロトタイプデバイスをビルドしたものの、すべて採用されることがなかった。 Steve Jobs は、自分がもっとも誇りに感じていることのひとつとして、新しいタブレットバイスの投入に際し、まずそれを支えるエコシステムを構築することなく、デバイスを投入しようという誘惑に打ち勝っていることだ、とさえ語ったことがあった。
タブレット製品を投入するということは、たとえ素晴らしいハードウェア機能を備えていたとしても、それをサポートしようと待ち構えている対象がいなくては、失敗することが約束されているようなものだからだ。 Newton での主な問題は、Apple が同製品を計り知れない潜在性を秘めたおもちゃとして市場に投げ与えたたけだったことだった。 箱から出しただけでは多くのことはできず、購入に踏み切らせることができなかったのだ。 臨界質量を築くために必要なのは、その製品を購入する価値をもたらしてくれるサードパーティ開発者を惹き付けることが肝要だということが明らかになったのだった。
似たような問題は、Zoomer や EO にも当てはまっていた。 その一方で、アプリケーションをいっさいインストールしなかったとしても、Palm Pilot は実用的で便利だった。これは、そのユーザーベースと開発者らの間での興味の対立といった両側面に影響した。 MicrosoftTablet PC は、サードパーティ製ソフトウェアがないとあまり実用的にはならず、当然のことながら、それは人気に水を差すことになった。 当たり前のことながら iPhone も完全な機能を備えて出荷された。初年度は、追加ソフトウェアをインストールするような公式的な仕組みがなくとも、携帯電話自体がもたらすメリットによって評判になった。
対照的に、WebOS ベースの Palm Pre や GoogleAndroid 携帯では、広告だけでは大きな関心を呼び起こすことができず、それがためにサードパーティ製ソフトウェアのオプションも限られたままとなり、ゆえに、開発者がそこに参加して状況を変えていくための経済的理由もないままになってしまっている。 Google の公式プランでは、シンプルに充分な数の Android 携帯を押し出して臨界質量へと到達させようとするものだが、自慢できるほどの売上げを記録したモデルはひとつとしてなく、毎回新たにハードウェア機能を追加したために、開発者がすべての Androidバイスでシームレスに動作するソフトウェアを展開することが難しくなってしまった。
今年の CES やその周辺において、さまざまな製造企業が、主要機能が不明確で開封直後はほとんど役に立ちそうもないハードウェアタブレットバイスを送り出した。 Apple から予測されているタブレットは、そのような問題には直面しないだろう。というのも、同社はすでに iPhoneiPod touch 開発において開発者らの注意を得ており、既存のモバイルアプリケーションをタブレットの新しい画面やユーザーインタフェースに適用させるべく作業をしているとされているからだ。
新しいタブレットデザインの立ち上げがうまくいけば、Apple は模倣からも守られることになる。なぜなら、同社のソフトウェア資産は、同社独自のソフトウェアプラットフォームと緊密に結びついており、ハードウェアクローンに適用させることは現実的ではないからだ(どのスマートフォンiPhone 用アプリを実行できないのと同じだ)。 また、Apple がそのタブレットiTunesMaciPhoneiPod touch ユーザーを対象にマーケティングすることを考えると、同社の競争相手は独自に iTunes に相当するものを立ち上げて、自分たちの新しいデバイスとユーザーの PC とスマートフォンとが同期できるように、一から作業しなければならない。
それは、Palm の WebOS を頓挫させたようなあまりにも膨大な作業であり、Android ユーザーにもクラウド同期を強いるほどのものなのだ。 それは、Sony のような大手製造企業にとってさえも高いハードルだ。彼らは、はるかにシンプルな iPod に対抗しようとしていた時にさえ、まったく歯が立たなかったのだ。 ベンダーらは Apple タブレットの発表にどう反応するのだろう?  2010 年のこれからは、タブレットバイスが消費者家電において重要な製品となる可能性を秘めたものなのか、そしてそうである場合、どの企業がもっとも利益を得られるのかを見届けるという、ワクワクするような時間となるだろう。

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